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 第16回:農業機械にもっとも多く使われるセンサについて

農業機械の自動化装置に、もっとも多く使われるセンサは可変抵抗器です。
ボリュームとか、ポテンショ・メータとか言われるものです。
今回は、サーキット・テスタを使って可変抵抗器の故障診断を行う方法について記載します。

サーキット・テスタを使って、可変抵抗器をテストしたり、出力線の電圧を測定したりして故障診断することは、どの機械の修理にも応用が効きますので、是非活用してください。

可変抵抗器の診断と言っても、その診断に至るまでの予備知識が必要ですが、電気、電子回路ついて説明するには、膨大になり過ぎてしまいます。したがって、基礎的な事についての説明は省かして頂きますのでご理解ください。
また、コンピュータなどの制御回路(ECU)を然程理解していなくても、その回りの作動を理解していれば殆どの電気系のトラブルは解決できると思います。それは、ECU前後の回路や装置で起こるトラブルが多いからです。
しかしながら、プログラムまでは書けなくていいので、ある程度は半導体の役割とリレー・シーケンス制御を理解しておく必要があります。



具体的に故障診断の例を挙げてみます。

例えば、トラクターでロータリ耕運作業時に、自動耕深制御を使っても一定の深さで耕せない症状がを起こるとします。
※自動耕深装置を切った状態でワンタッチ操作は正常に昇降作動、ポジション・レバー操作は正常に昇降作動する。また、ユニバーサルJ、耕運爪は良好において。

この場合、よくある症状として次の原因が考えられます。
機械的な制御でロータリを昇降させてるいるトラクター
①カバー・センサ・ワイヤが膠着している。
②均平板が側板に付着した泥に引っかかっている。
③均平板がフリーになっていない。
電気的な制御でロータリを昇降させているトラクター
①カバー・センサ・ワイヤが膠着している。(ワイヤを使わず、直接センサをロータリに取り付けているトラクターは関係ありません…イセキに多い)
②均平板が側板に付着した泥に引っかかっている。
③均平板がフリーになっていない。
④カバー・センサの故障
⑤配線の断線、コネクタ接触不良。
⑥操作ボックスの耕深ダイヤル不良、スイッチ不良。
注意:ごく稀にECU(CPU)が故障してる場合もあります。また、自動水平異常の場合は、どちらかに傾いたままになるなどして、左右どちらかが浅くなったり深くなったりしますが、上記とは意味合いが違います。そして、制御が異なるので関係ありません。

機械的か電気的かの簡易的な判断方法は、耕深調節がポジション・レバー(油圧レバー)の隣に並んで大きいレバーで行うタイプは機械式で、ダイヤルや小さいレバーで行うものは大抵は電気式です。

①②③は見て触って分かると思いますが、④⑤⑥はサーキット・テスタを使わないと分かりません。

自己診断機能があるものは例外です。下例は自己診断機能付きのトラクターですが、説明のためテスタを使います。


そして、④のカバー・センサと⑥の操作ボックスの耕深ダイヤルは、一般に可変抵抗器が使われています。
可変抵抗器は、抵抗値、変化特性、回転角などいろいろ種類がありますが、使用環境や使用頻度に応じて劣化していくものです。

ここからは、④のカバー・センサの故障と、⑤の配線の断線、コネクタ接触不良についての点検方法を説明していきます。また、農業機械では、もっとも多い可変抵抗器の使われ方です。

必要工具と道具:  サーキット・テスタ(マルチ・メータ)、汎用工具(トラクターによる)

◎カバー・センサの故障診断について
カバー・センサカバー・センサです。
このセンサは、センサ・ワイヤを介してロータリの均平板の上下を感知します。

コネクタを外します。

機械的な回転角は120度(電気的有効角110度)の可変抵抗器です。
変化特性は、もっともよく使われる直線的なタイプ(B)です。
※両端5度分は抵抗変化がない。
カバー・センサ 両端 抵抗測定まず、両端の抵抗を測定します。
このトラクターに使われるカバー・センサは2kΩのものなので、1.6~2.4kΩの範囲内ならOKとします。

可変抵抗器やコイルなどの実測抵抗値は、これくらいのばらつきがあるものです…。


※テスタは、抵抗測定モードなので、赤黒どちらも極性はありません。
カバー・センサ 両端-中間線 抵抗測定両端がOKなら、次は左写真のように両端と真ん中をそれぞれ2通り測定します。

2kΩのポテンショ・メータの場合
+入力線と中間線:2k→0
中間線とGND線:0→2k

例えば、+入力線と中間線が1.5kΩの時は、中間線とGND線は0.5kΩになっています。
カバー・センサ 抵抗測定手でゆっくりレバーを回していき、抵抗値が滑らかに変化していけばOKです。
両端の測定値が2kΩなら、0~2kΩまで変化します。

よくある症状は、回していく途中で一瞬切れることです。
こうなったら、交換です。

アナログ・テスタのほうが、抵抗値の変化は分かり易いかも知れませんが、私はデジタルのほうが扱い易く好きです。
可変抵抗器は、2つの抵抗を直列に接続して、その抵抗間から中間線を出しているようなものです。
左回路図を例に、電圧(V)、電流(I)、抵抗(R)の関係を説明します。

抵抗を直列接続すると、その総和が合成抵抗値(R)になります。
R=R1+R2

また、直列接続されているどの抵抗にも同じ電流が流れます。
そして、電源電圧はそれぞれの抵抗の電圧降下の和に等しくなります。
V=V1+V2

これらは、オームの法則(V=IR)が成り立ちます。
V=IR2
V=IR1+IR2


可変抵抗器は、中間線を境に抵抗を2分するので、それぞれ(V1とV2)にかかっている電圧が違ってきます。
つまり、ポテンショ・メータやボリュームにおいて、検出位置が変化すれば抵抗値が変わるので、電圧を変化させることが出来るのです。
この変化するアナログ電圧のV2側を、A/Dコンバータ(ECU内)でディジタル(1、0の信号)信号に置き換えられます。


取り出し電圧の例

ロータリ均平板が最上端時のR2抵抗値は1.7kΩ、最下端時のR2抵抗値は0.4kΩであった場合の取り出し電圧V2を考えて見ます。ちなみに入力電圧Vは5Vです。
右上の方程式を使います。V2=VR2/(R1+R2)

最上端時のV2取り出し電圧
V2=8.5/(0.4+1.7)   V2=4.0476…
V2=4.05

最下端時のV2取り出し電圧
V2=2/(1.7+0.4)   V2=0.9523…
V2=0.95


◎センサ出入力線の診断について

注意:この回路図は出来るだけ解り易く記したものなので、例えばフュージブル・リンクやアクチュエータ回路などは記していません。当然ですが、実際には他にも多くの電子部品が使われています。

通常、可変抵抗器の出入力線は、上図のように3本の線でECUと繋がっています。
エンジンを始動したら、カバー・センサの両端には常に約5Vの電圧がかかり続けます。
そして、+線と中間線、中間線とアース線には分圧された電圧がそれぞれかかり続けます。
そのうちの中間線とGND線にかかる電圧は、ECU内で読み取りが行われ比較処理されます。

通常、農業機械のセンサ入力電圧はDC5Vを使用することが多いです。バッテリ電圧はDC12Vなので、ECU内でDC5V電圧を作り出しています。これは、抵抗分圧や3端子レギュレータなどで5Vに落としています。
電圧を落とす理由としては、同じ電位では、ヘッド・ライトなど他の負荷の作動によっておこる電圧変動の影響をECUが受けるのは都合が悪く、電圧を落とすことで、コンデンサなどを使い制御用の安定化電源を作り出せるためです。
そして、半導体の多くはDC3~5Vで作動するものが多いためです。
もちろん、DC12Vでも制御は可能ですが、部品代が高くつくし、電力の無駄使いになりますね。


ECUセンサ出力線の簡易診断

カバー・センサの接続コネクタを外して、ECU出力側のコネクタ元でサーキット・テスタを使って測定します。
必要モード:サーキット・テスタDC電圧測定モード、導通試験モード(抵抗レンジ)
注意:導通試験をする場合は、バッテリの端子を外して行って下さい。

①キー・スイッチをONにして、両端にかかる電圧を測定し、約5Vと表示されるか確認します。
(バッテリ、アース線、キー・スイッチなど正常において…パネルに電気が点く状態)
電圧が出ていない場合は、まずECUのヒューズを確認します。
切れている場合は、ECU入力電源の+線と他のセンサの+線が、アース線やボディなどに短絡していないか調べます。…ECUヒューズが切れている場合は、他の制御も働かないのですぐ分ります。

そして、ヒューズが切れていないのに5V電圧が測定できない場合は、配線の断線、コネクタ接触不良、センサ系のアース不良を調べます。異常がなければ、ECUの故障になります。
ECUは、分解できるタイプなら分解してみましょう。
はんだがクラックしているくらいなら、回路が解らなくても修理可能ですね。その場合は、熱を与え過ぎないよう十分注意しながらはんだを付け直します。

②GND(アース)線は、トラクターのボディと導通している事を確認します。
アース線の断線、コネクタ接触不良を調べます。センサ系のアース線はアース線どうし統合されていて分り易いので、断線してる場合は作り変えてもいいと思います。
12VのGNDと5VのGNDは同電位になります。途中で述べた分圧の理屈ですね。

③中間線は、+線、ボディと導通していない事を確認します。
導通していたら、漏電、短絡しているので調べます。通常、ヒューズは切れません。
※ADコンバータの入力抵抗を介しての接地はあるため、完全な絶縁状態ではありません。

自己診断機能と書き換え機能について

自己診断機能
現在、トラクターは、故障箇所を自己診断して表示する機能が搭載されています。

これは、センサなどの異常時に出力した異常電圧をデジタル信号としてマイコンに記憶しておき、自己診断モード時に呼び戻すことで行っています。サーキット・テスタを使ってテストしなくても異常個所を判別できる利点があります。
しかし、通常この方式では、スイッチ関係のエラーは記憶されません。
また、通常時に異常があると表示パネルに何らかのエラー表示をする仕組みになっている機械が多く、その場合は分かり易いと思います。そして、詳しくどこが異常なのか自己診断モードにして知ることが出来ます。
しかし、古い機械になると自己診断機能もなく、何も表示しないものも少なくありません。

診断表示例
  • 異常箇所を何かの表示灯に置き換えて知らせます。また、点滅回数によって、異常個所が分かるようになっています。点滅させる表示灯は機械によって様々です。
  • 異常個所を言葉で表示します。
  • 各センサの取り出し電圧を表示します。

書き換え機能(微調整)
センサ取り付け部が固定のタイプ(調整不可能)
各センサの基準値を設定するため、RAM(ラム)の書き換えが必要になります。
トラクターでは主に、自動水平制御などの水平基準値の設定をし直す作業です。
しかし、今回説明にあるカバー・センサは通常例外で、書き換えする必要はありません。コネクタを外したり部品交換などした場合には、始動時の最初にロータリを最上げ位置にしたとき、自動で基準値を記憶する仕組みになっています。
センサ取り付け部のネジ穴が長穴になっているタイプ
そのセンサに対してのRAM(ラム)の書き換えはありません。センサの取り付け位置で調整し、基準位置を合わせます。また、水平制御は、微調整用のボリューム(水平、平行)や調整ロッド(水平、平行)をドライバで調整して行います。
※「平行」とはポジション・レバー最上げ位置において、トラクターに対してロータリが平行であるかということです。


通常、自己診断機能や書き換え機能を行うには、トラクター水平、ポジション・レバー最上げ位置などその機械ごとの設定条件にした上で、規定の操作をして行うことが出来ます。また、特別な機材は必要なく、手順のみの簡単操作で行えます。
例:作業姿勢スイッチを上げ側にしながら、キー・スイッチONなど。


可変抵抗器が使われてる主な箇所
操作ボックス
トラクター:自動耕深ダイヤル、自動水平ダイヤルなど
コンバイン:自動水平ダイヤル、刈り高さ自動ダイヤルなど
乾燥機:穀物量ダイヤル、停止水分ダイヤルなど
作業位置の検出
トラクター:カバー・センサ(均平板位置検出)、リフト・アーム・センサ(リフト・アーム位置検出)、ストローク・センサ(リフト・シリンダ位置検出)、切れ角センサ(ハンドル位置検出)など
コンバイン:オーガ位置検出センサ、主変速レバー位置検出センサなど
    

 作成日:2010/9/29