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第19回:コンバイン足回りの遊動輪オーバ・ホールについて - SR195G



今回は、クボタ・コンバインSR195Gの遊動輪オーバ・ホールについて記載します。

また、第18回に続いて酸素アセチレン溶接を使った修理になりますが、足回りの修理で膠着の酷いものは、酸素アセチレン溶接がないと修理不可能だと思います。

遊動輪を固定する台を作って、その上で車軸などを叩いて抜く方法もありますが、膠着具合によっては、やはり不確実で時間がかかり過ぎます。

ここでは遊動輪単体の修理説明なので、クローラを取り外して遊動輪を引き抜くまでの説明は省略しています。


必要工具と道具:  12㎜ボックス・レンチまたはメガネ・レンチ、ラジオ・ペンチ、中ハンマ、小ハンマ、マイナス・ドライバ、鏨、角材、丸パイプ(外径22㎜、厚さ1~2㎜)、丸パイプ(外径38~40㎜、厚さ2~3㎜)、エンジン・オイル(0.1ℓ)、万能グリース、パーツ・クリーナ、紙ヤスリ(#400くらい)、酸素アセチレン溶接セット


※丸パイプは鉄、アルミ、塩ビなど、固いもので、上記の口径くらいの物なら何でも構いません。


遊動輪(フレーム付き) 右側右側の遊動輪(アイドラ)です。

写真では確認できませんが、がたついています。

遊動輪 裏側見るからに泥水シールが傷んでいます。

悪条件で使い続けた場合、新車から200時間程の使用で、完全にベアリングが駄目になっていることもあります。



遊動輪 プラグ 取り外しプラグを外します。

ハンマで叩いてマイナス・ドライバの先端を隙間に差し込み、起こすことで簡単に外せます。

遊動輪 泥水混入案の上、泥水が混入していました。

グリスは完全に切れています。

遊動輪 プラグプラグは思ったよりきれいだったので、再利用します。

遊動輪 固定ボルト 取り外し固定ボルト(頭部12㎜)を外します。

この遊動輪にはスナップ・リングが使われていません。

遊動輪 ベアリング 保持器 切断酸素アセチレン溶接で、ベアリングの玉を保持している部分(リテーナ)を全て切断します。

中火くらいでさっと切断します。

玉まで溶かさないようにします。

遊動輪 ベアリング 玉ずらし玉をどちらかに寄せます。

鏨を当ててハンマで叩けば移動します。

遊動輪 ベアリング 内外輪 隙間 一ヶ所削る(穴開け)酸素アセチレン溶接を使い、内輪と外輪の隙間の一部を削り落とし、玉を落とせる大きさの穴を作ります。

裏返して切り屑を落とします。

遊動輪 ベアリング 玉抜き穴から全ての玉を抜きます。

玉はラジオ・ペンチで摘まみ出すか、遊動輪を反対向けて落とすなどします。

遊動輪 ベアリング 内外輪 切断酸素アセチレン溶接で、内輪と外輪を切断して取り外します。

対角線上に切断すると簡単に取り外せます。

車軸や外輪接合面を削らないように慎重に行います。



遊動輪 ベアリング(泥水シール側) 玉抜き奥のベアリング(泥水シール側)の玉を落として、遊動輪を取り外します。

奥のベアリングは深いのでやり難いです。

遊動輪 ベアリング 内輪 泥水シール(スリーブ) 取り外し内輪と泥水シールのスリーブを取り外します。

スリーブは既に溶接熱でゴムが燃えていて、簡単に取り外せます。

遊動輪 泥水シール 取り外し遊動輪の泥水シールを取り外します。

こちらも既に溶接熱でゴムが燃えていて、マイナス・ドライバで起こして簡単に取り外せます。

遊動輪 ベアリング 外輪残ったベアリングの外輪です。

遊動輪 ベアリング 外輪 切断 取り外し酸素アセチレン溶接で、外輪を切断して取り外します。

ベアリング 泥水シール 残骸取り外したベアリングと泥水シールの残骸の一部です。

遊動輪 車軸 下処理車軸はカップ・ブラシ・グラインダ、又は紙ヤスリなどできれいに磨いておきます。

遊動輪 下処理ベアリング、泥水シールが取り付く接合面など内面を、紙ヤスリできれいに磨いておきます。

この作業を怠ると、組み付け時にベアリングや泥水シールの入りが悪くなります。

車軸フレーム 遊動輪車軸フレームと遊動輪です。



遊動輪 ベアリング6004LLU エンジン・オイル 塗付泥水シール側のベアリング6004LLUを取り付けます。

ここからは段ボールを敷きます。

パーツ・リストでは特殊ベアリング(LLH)になっていますが、同じSR型(SRM23など)では純正部品でLLUを採用しているので、LLUで問題ないと思います。

ちなみにその純正部品のLLUは緑のシールド板ですが、性能は赤のシールド板のものと同じです。

遊動輪 ベアリング6004LLU 取り付けハンマを使って金属音が変わるところまで打ち込みます。

対角線上に打ち込み、縁(外周)全体で金属音が変わることを確認します。

エンジン・オイルをベアリング外周全体に垂らしておくと入り易くなります。

また打ち込みは、ベアリング外径に合うパイプをあてがえば申し分ないですが、小ハンマをあてがって叩いても問題ないと思います。

遊動輪 泥水シール新品の泥水シールです。

遊動輪 泥水シール スリーブ泥水シールはシールと、スリーブに分かれます。

所謂、軸付きオイル・シールです。

遊動輪 泥水シール 取り付け エンジン・オイルを垂らす泥水シールを取り付けます。

ベアリングと同じように、シール外周(はめあい部)にもエンジン・オイルを垂らします。

刃先の潰れたマイナス・ドライバを外周(金属環)に打ち込んで取り付けようと思いましたが、打ち込み時にダスト・リップ部が傷みそうなので止めました。

遊動輪 泥水シール 取り付けということで、スリーブを入れて取り付けます。

丸パイプ(外径38~40㎜、厚さ2~3㎜)をあてがい、ハンマで金属音が変わるまで打ち込みます。

ベアリングの時の音と違い、ゴムがある分だけ少し鈍い音です。

遊動輪 ベアリング(プラグ側) 取り付け前遊動輪の向きを変えます。

プラグ側のベアリングは、シールド形ではなく開放形の指定なので、開放形を取り付けます。

遊動輪 ベアリング6004LLB ラバー・シール 取り外し開放形を切らしていて、代わりにLLBがあったのでこれを使います。

6004LLBのシールド板を両面とも取り外し、開放形として使います。

カッタの刃などを隙間に差し込み、起こせば簡単に取り外せます。

遊動輪 ベアリング間 グリス 詰め込みベアリングを取り付ける前にグリスを詰め込んでおきます。

万能タイプのリチウム・グリースで十分だと思います。

遊動輪 ベアリング6004 取り付け エンジン・オイルを垂らすプラグ側のベアリング6004を取り付けます。

ここでもエンジン・オイルをベアリング外周に垂らしておきます。

遊動輪 ベアリング6004 取り付け一つ目のベアリングと同様の手順ではめ込みます。



遊動輪 車軸 取り付け遊動輪を車軸に入れます。

車軸にエンジン・オイルを垂らしておきます。

入り易くなります。

遊動輪 車軸 取り付け 角材をあてがう角材をあてがった上から、ハンマで叩いて入れます。

角材は写真のものより大きいほうがいいと思います。

遊動輪 車軸 取り付け 丸パイプをあてがうプラグ側のベアリングが浮き上がってきたら、丸パイプ(外径22㎜、厚さ1~2㎜)をベアリングにあてがって、その上からハンマで叩きます。

真上から真っ直ぐ叩きます。

遊動輪 車軸 ベアリング 出面金属音が変わるところまで打ち込みます。

外径用の丸パイプ(外径38~40㎜、厚さ2~3㎜)に変えて叩くのもいいかと思います。

車軸とベアリングの出面が同じである事を確認します。

遊動輪 車軸 固定ボルト 締め付け固定ボルトを確実にしめます。

遊動輪 グリス 塗り込み遊動輪を手で回しながらグリースを塗り込みます。

液体ガスケットを塗付してプラグを再利用するので、プラグ接合面にはグリースを付着させないようにします。

付着したらウエスで拭き取っておきます。

遊動輪 プラグ 取り付けハンマでプラグを叩いて嵌め込みます。

再利用なので、液体ガスケットを塗付して取り付けます。

対角線上に交互にずらしながらツバ全体を叩き、ツバ全体の叩き音(金属音)が変わるところまで打ち込みます。

グリースを詰め込み過ぎるとエアが抜けず、浮き上がってくることがあります。



作成日:2010/12/19