第25回:単発エンジンで白煙が出続ける症状の修理について

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今回は、オーレック・ウィング・モアWM604Aでエンジンから白煙が出続ける症状の修理について記載します。
搭載されていエンジンは、三菱の単発OHVエンジンGM131Pです。

エンジンから白煙が出るのは、エンジン・オイルがガソリンと空気の混合ガスと一緒の燃えている事が原因です。

原因としては、単にエンジン・オイルの入れ過ぎ、またはピストン・リングの摩耗、バルブ・ステム・シールの摩耗の何れかになります。


ピストン・リングが摩耗すると、クランク・ケース内のエンジン・オイルは燃焼室まで上がってしまい、エンジン・オイルと混合ガスが一緒に燃えます。

また、エンジン・オイルを極端に入れ過ぎても、同様にエンジン・オイルは燃焼室まで上がってしまい、エンジン・オイルと混合ガスが一緒に燃えます。

そして、単発エンジンでは影響が少ないと思いますが、バルブ・ステム・シールの摩耗(オイル漏れ)によっても、バルブ側からエンジン・オイルは燃焼室まで下がり、エンジン・オイルと混合ガスが一緒に燃えます。


今回はエンジン・オイルの入れ過ぎではなかったので、ピストン・リング、又はバルブ・ステム・シールの交換になりますが、両方を交換しましたので、その手順を説明していきます。


主に必要な工具、道具:10㎜ボックス・レンチ、12㎜ボックス・レンチ、14㎜スパナ、ボックス延長ソケット(エクステンションバー )、スクレーパ、耐水ペーパ(#600~1000)、ヤスリ、ハンマ、樹脂ハンマ、胴ハンマ、鏨、ウエス、コンプレッサ、エア・ガン、歯ブラシ、灯油少々、エンジン・オイル、シックネス・ゲージ、排油箱


※樹脂ハンマはあると便利ですが、なくても問題ありません。


エンジンを分解するので、回りの邪魔な部品は取り外していきます。

取り外す順番は、ベルトからでも、燃料タンクからでもどちらでも良いですが、エンジンのクランクケース・カバー側がむき出しになるまで、どんどん外していきます。

修理はロータリ・カバーを取り外さなくても出来ますが、エンジン本体の固定ボルト4本を増し締めしたかったので、ここでは外しています。

エンジン・オイルを、この段階で抜いても良いのですが、クランクケース・カバーを分離した時に必然的に抜けます。

草刈機のハンドルを何かに固定して、機体を倒れないようにします。

燃料タンク、ファン・カバー、キャブレータ、コントロール・パネル、ブラケットなどを外していきます。

これらは、それぞれが頭部10㎜のボルト、ナット少数で固定されているだけです。

ここまでは単純に外していくだけなので、詳しい説明はしません。

シリンダ・ヘッドを取り外します。

固定ボルト(頭部10㎜正ネジ)4本を外しヘッド・カバーを外したら、シリンダ・ヘッドの固定ボルト(頭部12㎜正ネジ)が2本現れます。

外に見えているボルト2本と合わせ、計4本の固定ボルトを外すと、簡単にシリンダ・ヘッドは外せます。

ロッカ・アームはここで外す必要はありません。

マフラは外しても外さなくてもどちらでも構いません。

取り外したシリンダ・ヘッドのシリンダ・ブロック合わせ側です。

妙な打撃跡があります。

何でしょうか…。

ヘッド・ガスケットは、アルミ製かステンレス製かどちらでしょうか…。

このクラスのエンジンだと、ヘッド・ガスケットをそのまま再利用したとしてもエンジンは問題なく始動しますが、やはり交換しておくのがベストです。

シリンダ・ブロックからプッシュ・ロッドを抜き取ります。

プッシュ・ロッドはタペットに載せてあるだけです。

ピストン上面には、シリンダ・ヘッドと同じ打撃跡があります。

プラグ交換時に何か落としたのでしょうか…。

固定ボルト(頭部12㎜正ネジ)6本を外しクランクケース・カバーを取り外します。

クランクケース・カバーのツバ部分(シリンダ・ブロックの合わせ面)に鏨を当ててハンマで軽く叩くことで、ブロックとケースが少しづつ分離していきます。

ブロックとの合わせ面をできるだけ傷つけないように少しづつ叩くようにします。

叩ける箇所が限られていて、なかなか対角線にとはいかないので、少し隙間が生まれたら手でケースを掴み引き抜いていきます。

なかなか抜けてこない場合は、クランク軸を胴ハンマで叩くことにより衝撃でケースが外れます。

胴ハンマなので、そこそこ強い力で叩いても軸頭は潰れません。

取り外したクランクケース・カバーです。

左写真のケースで、左にカムシャフト(タイミング・ギヤ付き)、中央にクランクシャフトのオイル・シール、右にガバナ・ギヤです。

ケース下にタペットです。

タペットとプッシュ・ロッドは吸排気ともに同じものなので、入れ替わっても問題ありません。

シリンダ・ブロックとクランクケース・カバーの接合面のガスケットはスクレーパできれいに剥ぎ取り、#600~1000くらいの耐水ペーパ(紙ヤスリ)できれいに磨きます。

最後は灯油を掛け流し、コンプレッサでエア吹き掃除しておきます。

取り外しの際に合わせ面を傷付けた場合は、ヤスリでバリ(膨らみ)を落としておきます。

次いでに、シリンダ・ブロックのシリンダ・ヘッドとの接合面(ガスケット接合面)もきれいに洗浄しておきます。

こちらは、灯油(ガソリン、軽油もOK)を使い歯ブラシで磨きます。
#1000の耐水ペーパで磨いても構いません。

最後は灯油を掛け流し、コンプレッサでエア吹き掃除します。



ピストンを取り外します。

固定ボルト(頭部10㎜正ネジ)2本を外して、大端部を外します。

その後、指でコンロッドを上方向に押せば、コンロッド付きでピストンは外れます。

通常、コンロッドとピストンには向きがあります。

このコンロッドは、側面に「マグネト側」と刻印があるので分り易いです。

つまり、「マグネト側」と刻印がある方が、フライホイール側になります。

仮に、何も刻印がない場合どうするかというと、取り外す時にマジックで印を書いておきます。

シリンダ・ボア内面は、意外にも目立った傷はありませんでした。

ピストンの打撃跡からして予想外でした。

シリンダ・ボア内面も多少なり摩耗しているとは思いますが、ピストン・リングだけ交換すれば、大抵は症状が回復するとと思います。

あまりコストをかけても仕方ないと思いますので…。

コンロッドのクランク軸受け部に、目立った傷は見当たりませんでした。

手前にある黒っぽい線は傷ではないようです。

何の線なのかは分かりません…。

ここで、ピストン・リングを外しておきます。

外した向き(裏表)と順番が分かるようにしておきます。

左写真で、上側にあるのがオイル・リング(3つで1組)です。

下側にあるのが左から2番リング、1番リングです。

1番リングには合い口に「IT」、2番リングには「T」と刻印が打ってあります。

ピストン・リングにはオーバ・サイズが用意されていますが、通常はスタンダード(ノーマル)・サイズを組み付けます。

一般には、焼けて傷が入った時の修理でボアを研磨した場合、オーバ・サイズのピストン、ピストン・リングを入れますが、汎用エンジンでそこまでしませんね。

このように手で1本づつリングを、リング溝にはめていきます。

リングはそれぞれ合い口を、120度づつずらして取り付けます。

決して1番、2番、3番(オイル・リング)の合い口を同じ方向にしないようにします。

圧縮漏れの可能性がでてきます。

1番リングは「IT」、2番リングは「T」と刻印がある側を上にして取り付けます。

届いたリングをそのまま取り付けるだけで、合い口の隙間調整は行いません。

届いた部品の精度を信じます。

通常、合い口調整はボアを研磨して大きくした時に行います。

ピストンをシリンダ・ボア内に入れます。

最初に必ず、エンジン・オイルをピストン・リング回りとシリンダ・ボア回りに垂らして(塗付)おきます。

ピストン・リングの合い口隙間が無くなるまで手で押さえ込み、その状態を保持したまま、少しづつピストン上面を樹脂ハンマなどで「トントン」と叩いて入れていきます。

決して力ずくで打ち込んではいけません。
無理に入れるとリングが折れます。

ピストン・リングがシリンダ・ボア内に入る瞬間は特に神経を使い、慎重に打ち込んでいきます。

自信の無い方は、サイズの合うセッティング・ツールを使いましょう。

コンロッド軸受け部(大端部)をクランクシャフトに取り付けます。

固定ボルト(頭部10㎜正ネジ)を確実にしめます。

固定ボルトは外したものをそのまま使います。

間違っても、ピッチが合うからといって違うボルトを使ってはいけません。

組み付けは、軸受け部に必ずエンジン・オイルを塗付してから行います。

タペットを入れ、カムシャフトを取り付けます。

カムシャフトは、組み込まれているタイミング・ギヤのポンチ穴と、クランクシャフト・ギアのポンチ穴を合わせて取り付けます。

取り付ける前は、タペット摺動部とカムシャフト軸受け部に必ずエンジン・オイルを塗付しておきます。

ケース合わせ面のダウエル・ピンが、欠落していないか確認しておきます。

組み付け前のクランクケース・カバーです。

分解時クランクシャフトに残っていたベアリングは、クランクケース・カバーに取り付けました。

ちなみにベアリングに隠れて見えませんが、オイル・シールは交換しました。

後はガスケットを取り付け、クランクケース・カバーを取り付けます。

樹脂ハンマで対角線上に軽く叩いて入れていきます。

クランクシャフトを手で小刻みに回し、ギヤの噛み合わせを気にしながら、ゆっりケースをはめていきます。

噛みあわせが問題ないなら、固定ボルトを対角線上にずらしながら閉めていきます。

シリンダ・ヘッドからインテーク・バルブを取り外します。

最初に固定ナット(頭部10㎜正ネジ、頭部14㎜正ネジ)を外し、ロッカ・アームを外します。

次にリテーナを握力で押し込み、コッタを外します。

コッタはバルブ軸の切り込み部(溝)に収まっているだけなので、リテーナを押し込んだままシリンダ・ヘッドを逆さ向ければ外れて落ちます。

単発エンジンのバルブはシリンダ・ヘッドが小さく、バルブとリテーナを手で横から掴めるため、握力だけで簡単にコッタを外す事ができます。

左からバルブ・スプリング、インテーク・バルブ、スプリング・リテーナ、コッタです。

インテーク・バルブを取り外したら、バルブ・ステム・シールを外します。

通常、バルブ・ステム・シールはインテーク側にしかありません。

バルブ・ステム・シールは、ウォータ・ポンプ・プライヤで摘まんで外します。

エキゾースト・バルブは取り外しません。

ここで、シリンダ・ヘッド全体を灯油浸けし、エア吹き掃除しておきます。

ヘッド・カバーのガスケットは、そのまま使うため、破らないように気を付けます。

バルブ・ステム・シールを取り付けます。

8㎜のボックスを使いバルブ・ステム・シールを打ち込みます。

はめ易くするため、予めエンジン・オイルを2~3滴垂らしてから行います。

軽く音が変わるまで打ち込んだら良しとします。

打ち込み過ぎて潰さないように気を付けます。

打ち込み終えたら、バルブ・ステム・シールにエンジン・オイルを2~3滴垂らしてから、取り外しと逆の手順でインテーク・バルブを取り付けます。

シリンダ・ヘッドのヘッド接合面(ガスケット接合面)をきれいに洗浄します。

よく分からない打撃跡はヤスリで擦っておきました。

シリンダ・ヘッド側のガスケット接合面は、灯油(ガソリン、軽油もOK)を使い歯ブラシで磨いた後、コンプレッサでエア吹き掃除する程度でいいと思います。

コンプレッサがなければ、パーツ・クリーナで洗浄後、ウエスできれいに吹いておきます。

シリンダ・ブロック側のガスケット接合面は、きれいなウエスで油分を拭き取っておきます。

ここで灯油を掛け流すと、組み付け時に塗付したシリンダ・ボアの油膜が流れてしまう恐れがあるので、ウエスを使います。




ダウエル・ピンが2個付いていることを確認し、ガスケットを入れてシリンダ・ヘッドを取り付けます。

固定ボルトは、対角線上にずらしながら締めていきます。

この固定ボルトもコンロッド大端部と同様に、ピッチが合うからといって違うボルトを使ってはいけません。

外した固定ボルト4本をそのまま使います。

この時点で一段落になりますので、ここからは簡単に説明していきます。


プッシュ・ロッドを入れ、ロッカ・アームを取り付け、バルブ・クリアランスを調整してナットを締めます。

バルブの間隙(クリアランス)調整は、圧縮上死点で行います。

圧縮上死点が正確に分からない場合は、フライホイールを手で回し、プラグ穴からピストンを覗いてピストンが真上にきた時に、両方のバルブが完全に閉じている状態になっていれば、そこが圧縮上死点になります。
フライホイールに「T」の刻印などは無いので、自分の感覚でピストンを上死点にします。

但し間違えるといけないのは、両方のバルブが微妙に開いているオーバ・ラップ時です。

これはフライホイールを回した時、1周おきに圧縮上死点と排気上死点(オーバ・ラップ時)を繰り返すので、間違えると圧縮上死点でクリアランスが極端に広くなり過ぎてしまいます。

間隙調整はシツクネス・ゲージを使います。

ここでは、間隙をインテーク0.08㎜、エキゾースト0.1㎜にしました。

このエンジンの正確なバルブ・クリアランスを知りません…。
ですが、このくらいで問題ないと思います。

後の作業は説明するまでもないので省かして頂きます。

エンジン・オイルは、確実に適量入れるのが大事です。


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作成日:2012/3/7