第27回:水が混入して回らないブラシ付きDCモータの分解洗浄について

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今回は、ブラシ付き直流(DC)モータの分解洗浄の仕方について記載します。

モータが回らない場合の通常の確認手順

①ヒューズを確認(最初から2でもOK)
②モータ入力電圧をテスタで確認


この順番で確認して全て問題ない場合、基本的にはモータが異常ということになります。

※コネクタなどの接触不良の場合もあります。


ここで説明するDCモータは、クボタ・コンバインARN219の刈取スライドに使われているものです。

農業機械でよく使われるタイプ(多少は違う)のブラシ付きDCモータなので、いつか分解する時がきたら参考にしてください。

刈取スライドが動かないということで、上記の順番に確認したところ問題がなかったので、モータに異常があると判断し分解することになりました。

分解する前に、バッテリから直接ケーブルで繋いで確認したところ、やはり動きませんでした。


主に必要な工具、道具:プラス・ドライバ、マイナス・ドライバ、耐水ペーパ(#240くらい、#800~1000)、針金(細くて硬いもの)、ウエス数枚、コンプレッサ(エア吹き掃除)、歯ブラシ、キャブレータ・クリーナ、リチウム・グリース、サーキット・テスタ


モータの構造と特長


左写真で、右のほうにある黒いビニールで覆われているものが、刈取スライド・モータです。

コネクタと頭部12㎜の固定ボルトを2本外して、刈取スライド・モータを取り外します。

整備の途中なので刈取部は開いていますが、閉まった状態でもモータは取り外せます。

刈取スライド・モータと刈取部を動かすシャフトです。

頭部10㎜の固定ボルト3本を外し、取付プレートを外して保護ビニールを剥がします。

分解する前に、コイルの抵抗値を測定してみます。

コネクタ内の2芯で測定するのでアバウトなものです。

もちろん極性はありません。
結果は12.7Ωです。

回転子(ロータ)の位置によってバラツキますが、数値的には問題ない値だと思います。

この時点で、このモータは何とかなると判断できます。

逆にキロやメガなどの値を示すようなら、焼き付いていたり(コイル線が切れてる)、ブラシと整流子の接触不良などの原因が考えられます。

ちなみに私は、12VのDCモータが焼き付いた症状を見た事がありません。



プラスの固定ネジ3本を外しギヤ・ケース・カバーを外すと、思ったとおり水が出てきました。

プラスの固定ネジ2本を外しモータ・キャップを外すと、やはり水が混入していました。

ハウジングを外します。

永久磁石があるためロータも一緒に付いてきます。

ロータを引き抜いてみると、コアに汚れがしっかり付着しています。

ハウジング内は、このように酷い状態です。

軸受部に保護材らしきものが付いていました。

軸受部の油分を逃がさないようにするものですか!?…後項写真参照

ハウジング内をきれいにします。

ハウジング内面や、永久磁石に付着している赤錆などは、マイナス・ドライバなどで削り落とします。

灯油やキャブレータ・クリーナをあまり吹き付けず、コンプレッサのエア吹き洗浄を中心に掃除します。

ある程度は適当で構わないと思います。

永久磁石はボンドで貼り付けてあるだけなので、念入りに磨こうとして、何回もキャブレータ・クリーナなどを吹き付けていると剥がれ落ちます。

もし永久磁石が剥がれ落ちたら、きれいに油分を落として、ボンドで接着して直します。

この場合は、完全に乾くまで何時間か待たないと組み付けることは出来ません。

この保護材!?は、ハウジングの軸受部のところに付くものです。

コンプレッサできれいにエア吹き掃除しておきます。

次にロータを組み付けるため、この保護材はハウジングの軸受部にはめ込んでおきます。

ロータのコアと整流子(コミュテータ)をきれいにします。

コアにこべり付いた汚れは、マイナス・ドライバで削り落としました。

その後、灯油浸けした#240の耐水ペーパで磨きました。

整流子は、灯油浸けした#1000の耐水ペーパで全体を簡単に磨いた程度です。

最後は、コンプレッサでしっかりエア吹き掃除しておきます。

この整流子とブラシが接触する面が、とても大事です。

よくブラシ付きDCモータは、この整流子がブラシとの摺動で摩耗するか、ブラシ自体が摩耗して駄目になるなんて言われますけど、農業機械で使われるブラシ付きDCモータでは、まずそんなことは起こらないと思います。

使用頻度が低過ぎるからです。

だからなのか、前者より寿命が長いブラシレス(ブラシが無い)DCモータが主流となっている現在でも、安価な理由もあり、農業機械ではブラシ付きDCモータがよく使われると思います。

ギヤを外すため出力軸の平座を外します。

ギヤを引き抜くと、やはり水が出てきます。

掃除して水気を飛ばしておきます。

取り外した出力軸(ギヤ)です。

適当に拭いて水気を飛ばしておきます。

左写真で、AとBの刻印が打たれているものがブラシです。

整流子と接触する面には汚れが付着しています。

この部分はとても大事なので、灯油やキャブレータ・クリーナなどを使い、歯ブラシで磨いてきれいにしておきます。

また、#1000の耐水ペーパでさらっと磨いておきます。

と言っても、農業機械で使われるブラシ付きDCモータは、使用頻度が低いので摩耗することもなく、汚れを落とす程度で構いません。

ブラシ・ホルダ内などもきれいにしたら、最後は、コンプレッサで全体をエア吹き掃除します。

バネをブラシ・ボルダ下部に引っ掛け、ブラシをブラシ・ホルダ奥まで入れて待機状態にします。

つまり、一時的にブラシがバネで押されていない状態にしておくということです。

ハウジング奥側に取り付くロータの軸端は、左写真のようにベアリング式になっています。

この玉は、左写真のように組み込んであるタイプと、そうでないタイプがあります。

ロータの軸端にグリースを塗付して、ロータをハウジングに組み込みます。

ハウジング(ロータ)をボディにゆっくりと入れて、ブラシ間に整流子が入ったところで止めます。

針金を使いブラシ・ホルダ下部に待機させてあるバネを、ブラシ・ホルダ真ん中の切り込みに落とします。

つまり、バネがブラシを押すようにします。

バネ全体が外れないないように慎重に行います。

両極とも戻したら、キャップをして固定ネジ2本を締めます。

ギヤを入れ、ギヤ回りにグリースを塗付します。

ここではリチウム・グリースを使いました。

正直、左写真はグリースの付け過ぎです。

何でもそうでうが、グリースを詰め込み過ぎると動きが重くなります。

回転抵抗が増えてしまうのです。

しかし、気分的にどうしても詰め込み過ぎてしまいますね。

ギヤ・ケース・カバーを取り付け、ビニールを被せて完了です。

その後、刈取スライドは無事に作動しました。




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作成日:2013/1/28