第30回:トラクターのエンジン停止装置について

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今回は、トラクターなどに使われるディーゼル・エンジンの停止装置について、どのように作動するのか一例を挙げて説明します。


ディーゼル・エンジンは、インジェクション・ポンプに供給される燃料を遮断することで、停止させることができます。

その燃料を遮断する方法として、ストップ・ソレノイドやストップ・モータなどが使われます。

その中で、前者のストップ・ソレノイドを使った停止装置について、どのように作動するものなのか回路図を使い説明します。

ここで説明するエンジン停止装置は、ストップ・ソレノイド、つまり電磁弁(ソレノイド・バルブ)を使ったもので、主にクボタ・トラクタのL1、GL、GT(一部)などの型式で使われているものです。

左写真のように外付けの装置で、12Vの電圧をかけるとプランジャが吸引され、エンジン・ストップ・レバーを引くようになっています。

このストップ・ソレノイドは、キーOFFで動作する停止時通電型です。

インジェクション・ポンプ・ケース内で動作するタイプ(常時通電型に多い)ではないので、動く瞬間を見ることが出来ます。


◎ クボタ・トラクタGL型式に使われているエンジン停止回路

GL エンジン停止 回路図

この回路図について

エンジン停止回路が中心なので、関係のない回路(始動回路を除く)は省いてあります。

タイマの端子番号は説明のために振り分けただけなので、実機とは関係ありません。

瞬間予熱方式のエンジンなので、キー・スイッチにグロー位置はありません。
したがって、OFF→ON→始動しかありません。

また、エンジン停止には全く関係ありませんが、キー・スイッチ、セル・モータ間のスイッチは、セーフティ・スイッチです。

ストップ・ソレノイドの動作

GL型式において、ストップ・ソレノイドは停止時通電型なので、キー・スイッチを「OFF」にした時のみ通電し動作するようになっています。

つまり、エンジン始動時、運転時はストップ・ソレノイドは動作しません。


では、実際にどのようにストップ・ソレノイドを作動させているか回路図で説明しますと、キー・スイッチを「OFF」にすると、タイマの端子「1」に印加されていたDC12Vが遮断されます。

この時、タイマの役割として端子「2」と端子「4」が数秒間短絡(接点が閉じる)される構造なので、バッテリからの常時電圧がストップ・ソレノイドに印加され、ストップ・ソレノイドが動作する仕組みになっています。

また、キー・スイッチを「ON」にすると、タイマの端子「1」にDC12Vが印加されるのですが、エンジン運転時も、タイマの端子「1」には継続してDC12Vが印加されたままなので、タイマの端子「2」-「4」間は短絡(接点が閉じる)されず、ストップ・ソレノイドは動作しません。

このタイマの端子「1」にDC12Vを印加するかしないか、これだけですね。


そして、ストップ・ソレノイドが動作する時間ですが、タイマの端子「1」に印加されていたDC12Vを遮断すると、タイマ・リレー回路が働き、タイマの端子「2」-「4」間が10秒前後だけ短絡されます。

憶測ですが、タイマは大まかにコンデンサ、抵抗、リレーを組み合わせた構造だと思います。

キー・スイッチ「ON」でコンデンサに電気が溜まり、「OFF」で放電といった感じです。
放電した電気でリレーが動作するみたいな!?ものだと思います。


ということで、ストップ・ソレノイドの動作時間は10秒前後です。

この時間は、エンジンを停止するには十分な時間です。

実際エンジンを完全停止するには2~3秒あれば十分ですが、余裕を持たせてあります。

逆に、ストップ・ソレノイドにいつまでもDC12Vを印加し続けると、この電磁弁の構造上発熱し続けるのでプランジャ回りが焼けてしまいます。


また、ストップ・ソレノイドの動作中キー・スイッチを「ON」にすると、再びタイマの端子「1」にDC12Vが印加されるので、タイマの端子「2」-「4」間は遮断されストップ・ソレノイドは働かなくなります。

この時、ストップ・ソレノイドのプランジャが内部スプリングに押し出されるので、「カチッ」と音がします。

これでインジェクション・ポンプに燃料を供給出来る、エンジンを始動できる状態になるということです。


この停止装置の欠点は、エンジン運転中バッテリ電圧が不足していると、キー・スイッチを「OFF」にしてエンジンを停止しようとしても、ストップ・ソレノイドが動作しない事です。

そのため手動の停止レバーが要ります。

例えば、バッテリが駄目なトラクタをブースタ・ケーブルなどで繋いで始動した時や、バッテリのターミナル接続不良でたまたま始動できた時などに起りえます。




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作成日:2013/7/10