第33回:自分で出来るトラクターの点検整備について

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今回は、クボタ・トラクタKL44ZCの点検整備について記載します。

自分で出来ることを中心にまとめました。


必要工具と道具:  14、17、19㎜メガネ・レンチ、モンキ・レンチ(~30㎜)、エレメント脱着工具、オイル・ジョッキ、ウエス、グリース・ガン、廃油箱(1~2)、コンプレッサ、エア・ガン、万能グリース


作業は必ず平坦な場所で行います。


◎エンジン・オイルとエンジン・オイル・フィルタの交換…交換時期:オイル100時間毎、フィルタ200時間毎、点検→始動前

クランク・ケース(エンジン・オイル)のドレン・ボルトは、エンジン真下のオイル・パンに2箇所あります。

左右の両方のドレン・ボルト(頭部19㎜)を外しますが、パッキンを無くさないようにします。

エンジン・オイル・フィルタは、エンジンの右側にあります。

エレメント脱着工具を使って外します。

正ネジなので、左に回せば外れます。

取付面をウエスできれいにします。

または、潤滑剤などを吹き付けて汚れを流します。

オイル・フィルタの取り付けは、オイル・フィルタのシール部にエンジン・オイルを薄く塗付し、ゴミが付着しないように気を付けて行います。

オイル・フィルタは手で締めますが、シール部が接触してから、2/3回転くらい回せば十分です。

エンジン・オイル給油口は、エンジンの右側にあります。

また、検油棒は給油口の左下あたりにあります。

エンジン・オイルは、検油棒(オイル・ゲージ)のFの所まで入れます。

エンジン・オイルを入れたあと、一端オイル栓をし検油棒を挿します。

そして、エンジンを始動し数分回して止めます。

その後、4~5分待ってからもう一度検油棒を確認します。
足りない場合はFのところまで追加します。

基本はF-E間に油面があればよいのですが、きっちりFまで入れておきます。

極端に入れ過ぎると出力低下の原因になります。


◎ラジエータのクーリング・システムの清掃…2年毎

防虫網を引き抜きます。

エンジン右側から引き抜けます。

防虫網をエア吹き掃除します。

コア部(フィン回り)もエア吹き掃除します。

エア・ガン先端をフィンに当てないように気を付けて行います。

ファン側からも行います。

ついでに、エアコンのコンデンサもエア吹き掃除しておきます。

防虫網も同様です。



◎エア・クリーナ・エレメントの清掃…100時間毎

ダスト・カップを外します。

手で止め金具を3ヵ所外すだけです。

手でエア・クリーナ・エレメントを引き抜きます。

エア・クリーナ・エレメントをエア吹き掃除します。

凄まじい埃が出ます。

内側からも清掃します。

全体から埃が出なくなるまで行います。

エア・クリーナ・エレメントを取り付ける前に、エア・クリーナ・ケース内もエア吹き掃除しておきます。

ダスト・カップのバキュエータ・バルブ回りもきれいに清掃しておきます。

ダスト・カップは、「TOP」マークを上向きにして取り付けます。


◎冷却水の点検…始動前

リザーブ・タンクの冷却水量の確認です。

左側にあるのは、ウインド・ウォッシャ液です。

ウォッシャ液は、少なければ適当に足しておきます。

「FULL」 から「LOW」の範囲であれば問題はありません。

折角なので「FULL」位置まで補給しておきます。

キャップは、「カチッ」と手応えを感じるまで確実にします。

また、リザーブ・タンクが「LOW」以下だった場合は、ラジエータ・キャップを外して冷却水の確認をします。

ラジエータ・キャップは、エンジン停止後30分経過してから外します。

冷却水が口元まで入っているか確認します。

少なければ水道水で良いので補給します。

ついでにラジエータ・キャップのパッキンが伸びていないか確認します。
余程じゃない限り大丈夫です。

折角なので、ラジエータ・キャップ接合面をウエスできれいに拭いて、ラジエータ・キャップのパッキン回りをエア吹き掃除しておきます。

冷却水は2年毎の交換になっていますが、個人的には4~5年おきでも構わないと思います。

もちろん2年おきに交換するのがベストですが…。

ラジエータ・キャップは前項写真のように確実に締めます。

締め損なっているとオーバ・ヒートの原因になります。


◎ファン・ベルトの調整…100時間毎

ファン・ベルトの確認です。

左写真は見るからに張り不足ですね。

オルタネータを固定しているボルト、ナットを緩めます。

話は反れますが、奥に見えるボルトはエアコン・ベルトの調整ボルトです。

エアコン・ベルトを張る場合は、テンション・プーリ軸のナットを緩めてから調整ボルトで張ります。

エアコン・ベルトの中央部を指先で少し強めに押さえて、10㎜程度たわむのが
理想です。

適正に張れたら、テンション・プーリ軸のナットを締めておきます。

調整…200時間毎

話はファン・ベルトに戻ります。

バールなどを使ってオルタネータを動かし、ファン・ベルトを適正に張ります。

ファン・ベルトの中央部を指先で軽く押さえて、10㎜程度たわむのが理想です。

エアコン・ベルトとの感覚の違いは微妙ですが、極端に張り過ぎない限り大丈夫です。

適正に張れたら、オルタネータの固定ボルトを締めます。


◎油圧オイル・フィルタの交換…交換時期:200時間毎

HSTオイル・フィルタの交換です。

ミッション・オイルは400時間毎(フィルタは200時間毎)に交換しますが、この作業は廃油の処理(量が多いため)などの問題もあるので農機具屋さんに依頼しましょう。

今回はあくまでも自分で行う点検整備を主においていますので、この作業は物理的に難しいと判断しました。

HSTオイル・フィルタの交換後です。

ミッション・ケース右側のミッション・オイル・フィルタはエンジン・オイルと同じ要領で交換しますが、このHSTオイル・フィルタの締め付けは、接合面に接触してから3/5回転きっちり締めます。

ミッション・オイルはどちらも少しか出ないので、排油せずに交換出来ます。


◎スーパ・ジョイント(ユニバーサル・ジョイント)のグリース・アップ…50時間毎

キャスタ・スタンド仕様のクボタ・ロータリが取り付いているので、キャスタ・スタンドを取り付けてからロータリを外します。

手順は「第31回:ロータリの着脱について」とほぼ同じなので省略します。

違うところは、キャスタ・スタンド仕様なので後2輪ハンドルを回す必要がない事です。

このオート・ヒッチ・フレームはW3P仕様ですが、クボタ・ロータリ(特殊3P作業機)の取り付けは、ロータリのトップ・マスト上部ピンを必ず下部フックで持ち上げて取り付けます。

間違えて上部フックで持ち上げると、ロータリのフロント・カバーがへこむので注意します。

ここから本題に入ります。

オート・ヒッチ・フレームは、適当に下がった状態(油圧レバーを下げ)にしておきます。

ジョイント・ホルダの正しい位置(下部にセット)を覚えておきます。

黄色の安全カバーを止めている鎖を外し、トラクタPTO軸側のユニバーサル・ジョイントを外します。

次にオート・ヒッチ・フレーム側のジョイント・ホルダを外します。

少し持ち上げ、開口部へ下げるように動かせば外れます。

取り外し順は、逆からでも構いません。

ユニバーサル・ジョイントを引き抜いて2つにします。

グリース・アップは何気に汚れる作業なので、汚れても構わない格好で行います。

前項で説明していませんが、ユニバーサル・ジョイントは、先端のロック・ピンを押しながら引き抜く事で外れます。

長年外した事がないと、当然ながら膠着気味になっています。

グリース・ガンを使って、グリース・ニップルに「ブチ、ブチッ」と音が出るまで注入します。

広角ジョイントなので、内側にもグリース・ニップルがあります。

安全カバーにグリース注入用の穴が開いています。

前項写真と合わせて、PTO軸取付け側のグリース・ニップルは3箇所あります。

ジョイント・ホルダ側(1箇所)も同様にグリース・アップしておきます。

ユニバーサル・ジョイント摺動部にもグリースを塗付しておきます。

オスとメスの組み付けは、スプラインが1箇所潰してあるところを合わせて行います。

メス側も同様に塗付しておきます。

ここで使用しているグリースは、全て2硫化モリブデン入りグリースですが、普通の万能グリースでも構いません。

ジョイント・ホルダには、ブッシュが左右に付いています。

無くさないように気を付けます。

どちらから取り付けても構いませんが、私はいつもジョイント・ホルダから取り付けます。

1人で行う場合は、この方がやり易いと思います。

PTO軸に取り付けた方は、ロック・ピンが確実に出てロックされている事を確認します。


◎3点リンク回りのグリース・アップ…50時間毎

ロータリを取り付ける前に、ロア・リンク回りのグリース・アップをしておきます。

こちらは油圧シリンダ下部にあるグリース・ニップルです。

引掛け部などにも注し油をしておきます。

要は金属同士が擦れ合う箇所全てに、油かグリースを塗付するのです。




◎ロータリ(RM190Z)のオイルの交換…交換時期:250時間毎

まだ、ロータリは外したままです。

ギヤ・ケースのドレン・ボルトは、PIC軸ケース固定ボルトと兼用になっています。

PIC軸ケース下部にある2本の固定ボルト(頭部14㎜正ネジ)の何れかを外せば排油できます。

ギヤ・オイルの給油量は2.5ℓです
ギヤ・オイルはミッション・オイルで構いません。

ロータリを取り付けた後の確認になりますが、ロータリを地面に付くまで下げた状態で、給油プラグの刻み線まであればOKです。

ギヤ・ケースのオイル交換が終わったら、ロータリを取り付けます。

キャスタ・スタンドは、もう必要ないので外します。

前項(ユニバーサル・ジョイントのグリース・アップ)の説明の補足にもなりますが、オート・ヒッチ・フレームに説明ラベルが貼ってあります。

ロータリを地面に付くまで下げます。

そして、モンキ・レンチを使いトップ・リンクのロック・ナットを緩めます。

目一杯トップ・リンクを伸ばします。

チェーン・ケースのオイルを抜くために、ロータリを後ろ下がりにする必要がありますが、こうすることで後ろ下がりになります。

プロテクタ(保護カバー)は外す必要がありませんけど、摩耗具合を見たかったので外してあります。

ドレン・ボルト(頭部17㎜正ネジ)を外して排油します。

チェーン・ケース上部のゴム蓋を外して、そこから給油します。

ギヤ・オイルの給油量は1.8ℓです。

ドレン・ボルトの少し上にあるボルトは検油ボルトです。

トップ・リンクを元に戻してからの確認になりますが、検油ボルトを外し検油口までギヤ・オイルがあればOKです。

トップ・リンクを必ず元に戻します。

説明ラベルによると、寸法は両端軸(ピン)の心々で615㎜です。

±3㎜くらいの精度で合わせます。

トップ・リンクの長さが適正、または許容範囲でないと、ユニバーサル・ジョイントなどの負担が増します。


◎その他のグリース・アップ…50時間毎

前部デフ・ケース支持部のグリース・アップです。

左写真は前側です。

前部デフ・ケース支持部のグリース・アップです。

左写真は後側です。

ステアリング・ジョイントの支持部などにも塗付します。

適当にねたぐっておきます。

スプレ・タイプのグリースでもOKです。

他にも、グリースや油を塗付するべき箇所はいくつかあります。

→各操作レバーやペダルの支点など、金属同士が擦れ合う箇所全て


◎これまでに説明がないけど、自分で出来るであろう事

ロータリの爪軸ベアリング・ケースのグリース注入(補給)…150時間毎
この部分のベアリングのグリースが切れるとベアリングが破損します。
説明しておくべき最重要ポイントだったかもしれません。
タイヤ空気圧の調整…必要に応じて
前輪157kPa、後輪98kPaくらい
室内エア・フィルタの掃除…200時間毎
フィルタが目詰まりするとエアコンの効きが悪くなります。

◎出来るなら行ったほうが良い事

燃料フィルタ・エレメントの掃除…必要に応じて、交換時期→400時間毎
汚れ具合は目視で判断し、必要なら掃除します。
チェック・チェーン(ターン・バックル)の張り直し
多くの場合、膠着が酷く簡単には回りません。
泥を落として潤滑剤を吹き付けます。

これまで述べた作業内容を全て行えば、整備工場で実際に行う点検整備の多くは済んでいると思います。


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作成日:2014/3/10