農業機械によく使われるDCモータの制御

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農業機械には、多くの直流(DC)モータが使われ、様々な機械の重要な部分を作動させている。
農業機械で使われるDCモータは、主にバッテリ電源(DC12V)で作動させて、正転と逆転の両回転方向を使うことが多い。

DCモータの入力線は2本で、それぞれ+と-に接続されることで回転する。
また、+と-を入れ替えることで回転方向を変えることが出来る。
その制御は、切換接点式(C接点)のメカニカル・リレーを2つ使って、3路スイッチなどで流れる電気の向きを変える電気回路が多く使われている。
そして、使われる箇所によっては、手動(3路スイッチ)以外に自動制御装置(コントローラ)で制御して、モータが自動で回転するようになっている。




同じような電気回路で制御されている箇所

※他にも様々な箇所で使われている。
  • コンバインの扱ぎ深さ制御
  • コンバインのオーガ横回転制御
  • コンバインの刈り取りスライド制御(2条クラス)
  • トラクターの回動ロータリの回動制御

DCモータの正転逆転制御…回路例

※バッテリ-ヒューズ間とコントローラ信号線の回路は省略する。


※コントローラからの入出力線(回路例の灰色部分)は、センサ信号線、コントローラの電源線、統合ECUとの連絡線などである。また、専用コントローラを設けず、統合ECU1つで全てを担うものもある。



手動(3路スイッチ)で作動させた場合は、コントローラに電気は流れない。
これは、コントローラ内のトランジスタ(NPN型)の特性を利用したもので、B(ベース)電流を流さないとC(コレクタ)-E(エミッタ)間の電気は流れない(増幅されない)ためである。

例えば、自動制御では、外部センサからのアナログ信号を、コントローラ内でディジタル変換されマイコンなどのICで演算処理される。そして、モータを回転させる必要があると判断された時は、マイコンなどのICからトランジスタのB(ベース)に抵抗を介して電気信号が流れる。
この時、NPN型トランジスタの特性からC(コレクタ)-E(エミッタ)間は電気が流れるようになる。
E(エミッタ)は本体と接続(アーシング)されているので、3路スイッチを押した状態と同じになる。

※自動制御に関してはあくまで一例なので、ここではNPN型トランジスタを使用していると仮定する。




■作動について

回路例において、3路スイッチを上に入れると、リレー1のコイルが磁化されるので、切換接点NC-CNO-Cに吸い寄せられて切り換わる。
リレー2の切換接点はNC-Cのままなので、
バッテリからの電気はリレー1のNO-C間をを経由してモータに流れ、モータは回転する。

そして、機械的に設けられたリミット・スイッチ(LS1)が切れると、電気は遮断されるのでモータは停止する。


逆に、3路スイッチを下に入れると、リレー2のコイルが磁化されるので、切換接点NC-CNO-Cに吸い寄せられて切り換わる。
リレー1の切換接点は、コイルの磁化が解け、NC-Cに戻っているのでバッテリからの電気はリレー2のNO-C間をを経由してモータに流れ、モータは逆回転する。

同様に、機械的に設けられたリミット・スイッチ(LS2)が切れるとモータは停止する。



NC(ノーマル・クローズ)…通常は閉じている
NO(ノーマル・オープン)…通常は開いている
C(コモン)…共通
■ダイオードの必要性

メカニカル・リレーのコイルには自己誘導作用があり、これは、コイルに電流が流れると磁界が発生し、電流が変化すると磁界の変化を妨げる向きに誘導起電力を発生する性質である。つまり、コイルに電流を流すとそれに反発しようとし、電流を遮断すると逆に流そうとすることである。
この性質において問題なのは、電流を遮断した時に、逆起電力が発生することである。
また、モータなどの誘導負荷をOn/Off制御する場合、リレーの接点は、接触時にはチャタリング現象を起こし、目で見えない火花が飛びノイズを発生させる。
これらの症状は、メカニカル・リレーの構造において仕方のないことだが、リレー自身の寿命を縮めたり、コントローラに悪影響を与えてしまう。

これらの対策として、リレーのコイル側にダイオードや抵抗を並列に接続したり、モータに並列にバリスタを接続する。

※電源電圧がDC12Vにおいての接続です。


ダイオード(D)は、コイル電流を遮断した時に発生する逆起電力から、主にコントローラ内のトランジスタを保護するためと、マイコンなどのICの誤作動を防ぐ目的で使われる。
これは、回路例のようにダイオードを逆向き接続して、コントローラ内のトランジスタOff時に発生するコイルの逆起電力(サージ電圧)を循環吸収させて、トランジスタに電気が流れないようにしている。
なるべく、リレーに近いところで使うと効果が高いが、リレー接点の遮断時間が多少なり長くなる欠点がある。
遮断時間を早くするには、ダイオードに抵抗を直列に接続すると効果があるが、抵抗値を大きくし過ぎるとサージ電圧の抑制効果は下がる。仮に接続するとしたら、リレーのコイルと同じ抵抗値、若しくはその数倍のものにする。

農業機械では、主に上記のダイオードを使った逆起電力対策が多く見られる。


抵抗(R)も、ダイオードと同じような役割で、逆起電力の吸収とマイコンなどのICの誤作動を防ぐ目的で使われる。リレーのコイルに抵抗を並列に接続することで、Off時に発生する逆起電力を抵抗にも吸収(消費)させている。
ダイオードが循環吸収だとすると、抵抗は衝撃吸収みたいなものではないかと考えられる。
メカニカル・リレーには、予め抵抗を内蔵したものがある。


バリスタ(Z)は、モータのOn/Off時に発生するサージ電圧から、主にリレーの接点を保護する目的で使われる。
これは、モータなどの誘導負荷は回り始めに高電流が流れ、この時、ブラシとコミュテータの接点で火花が飛び高電圧とノイズが発生するが、バリスタの定電圧特性を利用して吸収させることにより、リレーの接点間に高電圧(サージ電圧)がかからないようにするものである。

※農業機械で使われるDCモータは殆どがブラシ付きであるが、中にはバリスタ内蔵のものなどある。

コンデンサと抵抗を合わせたスパーク・キラーをモータと並列に接続する方法もあるが、使用電圧が直流の低電圧(12V)でスパークが比較的少ない(それでも凄い電圧)ためと、バリスタよりコストがかかる理由(恐らく!?)でDC12V作動の機械ではあまり見かけない。



■ヒューズについて

回路例では、1つのヒューズでリレーのコイル側と接点側(NO)の経路を保護しているが、リレーのコイル側と接点側(NO)で別々に電源を供給し、それぞれにヒューズを入れてモータ専用の保護回路を設けてもよい。


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作成日:2011/3