始動装置

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エンジンを始動させるには、外部からクランクシャフトを回さなければならない。農業機械で使われるエンジンは、一部の小型ガソリン・エンジンを除き自動車同様にセル・モータ(スタータ)が使われている。スタータはバッテリの電源で回転し、とても大きな力が必要なため、直流直巻モータまたは直流複巻モータを用いている。
現在、スタータは小型モータで大きなトルクを得るため、減速ギヤを使ってモータの回転を減速するリダクション装置付スタータが多く使われ、また、始動時に流れる大電流を断続するスタータ・リレーを使っているものが多い。


リダクション装置付きスタータの構造、機能


減速装置付きスタータと始動回路
モータ部
   
アーマチュア     
シャフト、コア、そしてこれらと絶縁されているアーマチュア・コイル、コンミテータなどから成る。シャフトは両端をベアリングで保持し、ポール・コア間を回転する。     
アーマチュア・コイルは、大電流を流す必要があるので断面積の大きい平角銅線が使われ、コイルの一方がN極側、他方がS極側にくるようにコアの溝の中に絶縁されて挿入されている。そして、コイルの両端はそれぞれコンミテータにハンダ付けされている。
ヨーク、ポール・コア     
ヨークは鉄製の筒でいわゆるモータの外枠である。そして、磁力線の通路になる以外に、内面にはフィールド・コイルを支持し磁極となるポール・コアが固定されている。
フィールド・コイル
アーマチュア・コイル同様大電流が流れ、同様に平角銅線が使われる。フィールド・コイルに流れる大電流はポール・コアに強力な磁力線を発生させ、モータの回転力を大きくする。
ブラシ
ブラシは普通4個あるが、そのうち2つは絶縁されたホルダに支えられ、他の2つはアースされたホルダに支えられて、それぞれスプリングに圧されながらコンミテータに接触している。スタータのブラシは、電流容量の大きい金属黒鉛質のものが使われる。

動力伝達
オーバランニング・クラッチ
エンジン始動後、エンジン側からモータ部が逆に回されるのを防止するものである。オーバランニング・クラッチはローラ式、ダブル・ローラ式、多板クラッチ式がある。
ピニオン・ギヤ
リング・ギヤと噛み合うギヤ。このギヤがリング・ギヤと噛み合って回転して、初めてエンジン始動させることができる。
リダクション装置     
アーマチュアとピニオン・ギヤ間に減速ギヤを組み込んだ装置で、いわゆる減速装置である。減速ギヤを組み込むことで、モータの回転トルクを約3倍にすることができる。したがって、モータを小型にすることができる。
ブレーキ装置
エンジン始動に失敗して、再びスタータを回すときピニオン回転が止まっていないと、ピニオン・ギヤとリング・ギヤがうまく噛み合わないので、アーマチュア・シャフトにブレーキ装置を取り付けている。ブレーキ装置は機械式が多く用いられ、遠心式、スプリング式、クラッチ式などがある。

マグネット・スイッチ
プルイン・コイル
プランジャを吸引するコイル。下図のように始動端子(S端子)よりつながれ、コネクティング・リード端子(C端子)からモータ部へつながれている。ホールディング・コイルより電磁力が強い。
ホールディング・コイル
プランジャの吸引を助けるコイル。下図のように始動端子よりつながれ、マグネット・スイッチ内でアースされている。
ホールディング・コイルは、メイン・スイッチが閉じかけたときプルイン・コイルの磁力が消滅しプランジャを吸引できなくなるので、これを防止するために、いったんメイン・スイッチが閉じた後のプランジャの吸引を保持する役目をしている。

マグネット・スイッチの回路 スタータの端子


よく聞く直結してエンジンをかけるというのは、導線などで始動端子(S)とB端子を短絡(ショート)させて、キー・シリンダを経由せずにスタータを作動させることである。





取り扱い注意等
  • スタータを長時間連続して回すと焼損する。通常10秒以内までで、JISでも連続運転時間の最大は30秒となっている。10秒程回してもエンジン始動しない場合は他の原因を考える。
  • 配線は規定以下のものは使わない。
  • エンジン始動中にスタータを回さない。ギヤやスタータ・ハウジングが破損する可能性がある。
  • スタータの回転速度が規定以下の場合は、多くの場合がスタータ自体の故障、バッテリが弱い、ターミナルが緩んでるのいずれかである。回転速度は大体音を聞いて判断できる。
  • スタータ取り付け固定ボルトは確実に締め付ける。通常2~3本で留めてある。


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作成日:2007/1