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予熱装置



ディーゼル・エンジンは自然着火なので、冷間時は圧縮空気の熱が冷えたシリンダに奪われるなどして始動困難になる。

そこで、予熱装置を設けエンジン始動前、始動し始めに圧縮空気を加熱して始動、運転し易くしている。

予熱装置は、グロー・プラグ式とインテーク・エア・ヒータ式があるが、農業機械で使われるディーゼル・エンジンは主にグロー・プラグ式が使われている。

現在は急速予熱装置が使われ、ガソリン・エンジンなみに始動が良くなっている。

渦流室式グロー・プラグは、一般に左図のように副室式(渦流室式、予燃焼室式)に取り付けられている。

キー・スイッチを予熱位置(グロー位置)に回すと、グロー・プラグの先端が800~900℃に加熱して空気を暖め、着火し易いようになる。

現在主流の急速予熱方式では、殆どのものがキー・スイッチに予熱位置がなく、ON位置にすると同時に急速予熱装置が働く仕組みになっている。

また、エンジン始動後のアフタ・グロー(一定時間の通電)もする。


左写真は渦流室式でグロー・プラグがあるが、直接噴射式では着火性が良いため、グロー・プラグがあるものと無いものがある。

グロー・プラグの種類
急速予熱装置の回路例



◎グロー・プラグの種類



シーズド型シーズド型(通常型)グロー・プラグ


左図のように、パイプの中のヒート・コイルに通電すると、パイプ先端部が赤熱するようになっている。

内部の空間は絶縁粉末で満たされて、ヒート・コイルの絶縁と保持をしている。

自己温度制御型自己温度制御型グロー・プラグ


左図のようにプラグ先端部からラッシュ・コイル、バランス・コイル、ブレーキ・コイルを直列に接続している。

バランス・コイルとブレーキ・コイルは温度上昇に伴い抵抗値が大きく増加する特性をもっているので、通電初期はラッシュ・コイルに大電流を流し、先端部が赤熱するとバランス・コイルとブレーキ・コイルが加熱され電流が低下する。

そのためラッシュ・コイルに流れる電流も抑制され、温度が上がり過ぎないように自己制御される。

セラミックス型セラミックス型グロー・プラグ


シーズド型グロー・プラグ先端の金属保護管をセラミックス化したものと、左図のように発熱部が発熱体(導電性セラミックス)と絶縁体(絶縁性セラミックス)で構成されるものとがある。

セラミックス型グロー・プラグはシーズド型に比べ、より大電流を流して短時間で高温にすることができる。

また、自己温度制御機能をもったものがあり、コントロール・コイルの温度上昇による抵抗値の増加で最高温度を制御している。



◎急速予熱装置の回路例



急速予熱装置の回路例

1.グロー・プラグ・メイン・リレー
2.グロー・プラグ・サブ・リレー
3.レジスタ
4.グロー・プラグ
5.水温センサ
6.タイマ2
7.スタータ信号検出部
8.レギュレータ信号検出部
9.タイマ3
10.タイマ1
11.グロー・インジゲータ・ランプ

キー・スイッチをON位置にしたとき
タイマ1からの信号によってグロー・インジゲータ・ランプが水温に応じた時間だけ点灯する。

冷却水の温度が規定値未満のときは、キー・スイッチをONにすると同時にグロー・プラグ・メイン・リレーとグロー・プラグ・サブ・リレーともにONになり、レジスタを通らずグロー・プラグに電圧がかかるのでグロー・プラグは急速に赤熱するが、自己温度制御型なので加熱が抑えられる。

そして、タイマ2によりグロー・プラグ・メイン・リレーは、キー・スイッチをONにしたときのグロー・プラグ電圧経過後にOFFとなり、グロー・プラグにはレジスタを通した電圧がかかり、グロー・プラグは適切な温度を保っている。

冷却水温度が規定値以上のときは、キー・スイッチをONにしてもグロー・プラグ・メイン・リレーとグロー・プラグ・サブ・リレーはOFFのままである。
エンジン始動時
キー・スイッチを始動(スタータを回す)位置にしてからクランキング中は、スタータのON信号によりタイマ3がリセットされ、冷却水温度に関係なくグロー・プラグ・メイン・リレーとグロー・プラグ・サブ・リレーがONになる。
エンジン始動後
スタータのOFF信号とチャージ・ランプが消灯してのレギュレータのON信号により、グロー・プラグ・メイン・リレーがOFFになるが、グロー・プラグ・サブ・リレーからレジスタを通りグロー・プラグに通電されるので、冷間始動直後の燃焼が安定しディーゼル・ノックや白煙を軽減することができる。



作成日:2006/12