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2サイクル・エンジンの始動、故障診断とその対処



故障診断とその対処


◎2サイクル・エンジンの各部名称

2サイクル・エンジン前面2サイクル・エンジン裏面PTO側


1.プラグ・キャップ / 2.インシュレータ / 3.クーリング・フィン / 4.カバー / 5.リコイル・スタータ / 6.マフラ(排気出口) / 7.燃料タンク / 8.燃料フィルタ / 9.燃料吸込みホース / 10.燃料戻りホース / 11.タンク・キャップ / 12.プライマリ・ポンプ / 13.キャブレータ / 14.エア・クリーナ・ケース / 15.チョーク・レバー / 16.スロットル・バルブ / 17.スロットル・ワイヤ / 18.遠心クラッチ / 19.ストップ・ボタン


上記図は草刈機、溝切機などに使われるエンジンの例で、大まかに各部名称を列挙したものである。

※ストップ・ボタンなど各部品の取り付いてる位置は、当たり前だがエンジンによって違う

◎始動方法



ダイヤフラム式キャブレータ・エンジン

(草刈機などに使われる比較的軽いエンジンは、現在フロート式よりダイヤフラム式が主流)

  1. 11の燃料キャップを外し燃料(混合ガソリン)を入れる。
  2. 12のプライマリ・ポンプを10の戻りホースから燃料が出るまで押す。(7~10回)
  3. 19のストップ・ボタンはエンジンを止める時に押すが、他、始動スイッチが付いてるものはONにする。
  4. 15のチョーク・レバーを「閉」にする。
  5. 16スロットル・バルブを中間にする。
    (スロットル・レバーを中速位置)
    または、スロットル・レバーを低速位置にする。
    (エンジンにより始動に適した位置がある)
  6. エンジン爆発音がするまで5のリコイル・スタータの紐を力強く引く。
    (現在主流のリコイル・スタータは軽く引く)
  7. エンジン爆発音がして始動し始めたら、15のチョークレバーをゆっくり「開」にする。
  8. 2,3分低速で暖気運転する。

エンジンが暖まってる場合には、チョーク・レバーは「開」のままでリコイル・スタータの紐を引いて始動する。

この状態でエンジンが始動しない場合は、再度「4」から始める。


燃料がキャブレータまで来てる始動可能な状態において、エンジンが始動できないまま何回もリコイル・スタータの紐を引き続けると、燃料をくい過ぎて更に始動困難になる。


その場合は、スパーク・プラグを外しエアで軽く吹くなどして、乾かしてから再度取り付けて行う。



◎故障診断



エンジンが始動しない
症状 原因 対処
リコイル・スタータの紐を引けない ①リコイル・スタータの紐が絡まってる
2サイクル・オイル過少の混合ガソリン使用などによるエンジンの焼き付き
リコイル・スタータを外し紐を直す、または紐交換
ピストン・リングピストン、ピストン・ピンなど症状に応じて交換、オーバ・ホール
スパーク・プラグに火花が出ない ①スパーク・プラグの不良
②スパーク・プラグ・キャップの接続不良
イグニション・コイルの不良
④始動スイッチ、またはストップ・ボタンの不良、それに関る配線不良
①交換
②正しく接続
③交換
④交換、または正しく配線
キャブレータまで燃料が来ない ①燃料タンクの錆び、または異物混入による詰まり
燃料コック(フロート式キャブレータ)の詰まり、漏れ
③燃料フィルタ、ホースの詰まり
④プライマリ・ポンプの破れ(ダイヤフラム式キャブレータ)
①燃料タンクの交換、または異物(ゴミ)を燃料タンク、燃料ホースから除去
②掃除、または交換
③掃除、交換
④交換
キャブレータから燃料が漏れる ①キャブレータのオーバ・フロー(ニードル・バルブ回りの詰まり、膠着、エア・ベント詰まり、ダイヤフラム式ではダイヤフラム・メタリング硬化) ①キャブレータの分解掃除、燃料コック、フィルタ掃除、ダイヤフラム・メタリング交換
①キャブレータの詰まり
圧縮がない
③半年以上放置された古い燃料の使用
①キャブレータ分解掃除
②ピストン、ピストン・リング、オイル・シール(クランク軸)など交換
新しい燃料を使用
エンジンが熱を持つと始動しない 進角ユニット不良(フルトラ式)
イグニション・コイルの不良
③オーバ・ヒート
①交換
②交換
③冷却風入り口、クーリング・フィン掃除
エンジンが止まらない ①始動スイッチ、またはストップ・ボタンの不良、それに関る配線不良 ①交換、または正しく配線
エンジンは始動するが、調子が悪い
症状 原因 対処
すぐ止まる ①キャブレータの詰まり
②ダイヤフム膜の硬化(ダイヤフラム式キャブレータ)
③スパーク・プラグ不良、カーボン付着
④燃料が悪い、古い
⑤燃料フィルタ、ホースの詰まり
①掃除
②交換
③交換、掃除(電極部カーボン除去)
正規の新しい燃料を使用
⑤交換
数十秒後に急に調子が悪くなり止まる(主に散布機) ①燃料タンク・キャップの空気孔の詰まり、または純正品でないタンク・キャップを使用  ①掃除、交換
低速回転が高い ①キャブレータのアイドル・アジャスト・スクリュ、またはスロー・ストッパ調整ネジの調整不良 ①調整
高速回転が出ない、もたつく ①キャブレータの詰まり
②ダイヤフラム膜硬化(ダイヤフラム式キャブレータ)
③燃料が悪い、古い
インシュレータの組み付け間違い(キャブレータとシリンダ間)
⑤燃料タンク・キャップの空気孔の詰まり
マフラの詰まり
⑦排気孔周りにカーボン付着
エア・クリーナ詰まり
⑨ノッキング(過早点火)
①キャブレータ分解掃除
②交換
③正規の新しい燃料を使用
④正しく組み付け
⑤掃除
掃除
掃除
⑧掃除、交換
⑨オクタン価の高い(ハイオク)燃料に交換、スパーク・プラグの交換、燃焼室のカーボン除去
出力不足 ①キャブレータの詰まり
②スパーク・プラグ不良、カーボン除去
③無理な使い方をしてる
④燃料が悪い、古い
①キャブレータ分解掃除
②交換、掃除(電極部カーボン除去)、または隙間調整
③規定の使用法で使う
④正規の新しい燃料を使用
濃い白煙が出続ける ①2サイクル・オイルの比率が規定より濃い 規定の比率(FB級なら25:1、FD級なら50:1)にする
異常な高回転 ガバナ(一部エンジンに有り)の不良、止めネジの緩み ①調整



◎エンジンの焼付き確認方法

次の場合は焼付きと判断する。

◎排気孔、マフラのカーボン除去の仕方

キャブレータ、マフラ、スパーク・プラグを外し、キャブレータ・クリーナをシリンダ穴に多めに吹き付け、数十分放置しコンプレッサのエアできれいに掃除する。

マフラ内にもキャブレータ・クリーナを吹き付け、数十分放置した後エアで吹く。
また、マイナス・ドライバなどで擦って落とし、コンプレッサのエアできれいに掃除する。

気をつける事

草刈機や溝切機などの2サイクル・エンジンは、エンジン回転が低中速回転で長時間使い続けると、作業抵抗(草刈、溝切など)と2サイクル・エンジン特性など構造上どうしても不完全燃焼の時が増え、スパーク・プラグの電極間や掃気孔淵、マフラ内にカーボンが付着し易くエンジン不調の原因になる。

そのため、出来るだけ高回転で作業する

また、混合ガソリン比(ガソリン:2サイクル・オイル)は通常FB級で25:120:1があり、20:1の混合ガソリンのほうがオイルが多い分エンジンには負担が少ないが、カーボンは25:1の混合ガソリンより付着し易い。


基本は使用するエンジンに推奨される混合ガソリン比があるので、取扱説明書で確認してから使用するのがよい。

最近の排出ガス規制に適合したエンジンは、FC、FD級の2サイクル・オイルを使用して50:1の混合ガソリンを使うようになっている。

JASO(日本自動車技術会規格)での混合ガソリン比の分類例

FB級
25:1(FB級を使用して50:1にはしない)
FC級、FD級
50:1(FC級、FD級を使用して25:1にはしない)

FB級使用→25:1
FC級、FD級使用→50:1



作成日:2006/2