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停止装置



ディーゼル・エンジンを停止させるには、インジェクション・ポンプに供給される燃料を止めて停止させる。

燃料停止装置は、ストップ・モータもしくはソレノイド・バルブを使った電装品でインジェクション・ポンプの燃料を止める方法と、インジェクション・ポンプのストップ・レバー(スロットル・レバー)をワイヤを介して引くことにより燃料を止める手動の方法がある。

◎ストップ・モータ

ストップ・モータ直流モータの回転運動にクランク運動を合わせてレバー操作をできるようにしたもので、キー・スイッチのOn/Offで作動し、目的に合わせて回転方向を変えて使われる。

左写真のストップ・モータは、ストップ・モータ・ギヤ・ケース内に切替スイッチを設けたもので、回転角に制限を設けている。

他には、類似のモータで違いとして切替スイッチを持たず回転角に制限がないタイプのものが、農業機械では様々な箇所で使われている。

作動例…1つのストップ・モータ・リレー(1c接点)を使用

エンジン停止時(キー・スイッチOff時)
キー・スイッチを切るとバッテリからの常時電源(タイマ・リレーがあっても良い)により、ストップ・モータ・ギヤ・ケース内の切替スイッチ、そしてストップ・モータ・リレーのC-NC接点を経由しアースされ、ストップ・モータが回転しストップ・モータ・ギヤが回転する。

この時、インジェクション・ポンプのストップ・レバーを燃料カット位置まで連結されたロッドを介して移動させ、ストップ・モータ・ギヤ・ケース内のギヤが回転角端部まで回り切替スイッチが働き、その電圧は遮断されストップ・モータは停止する。
エンジン始動時(キー・スイッチOn時)
キー・スイッチを入れるとストップ・モータ・リレーの励磁コイルに電気が流れ、C-NO接点が閉じる。

今度は逆に、12V電圧が閉じたC-NO接点からストップ・モータ・ギヤ・ケース内の切替スイッチを経由しアースされるので、ストップ・モータはOff時とは逆回転に回転しストップ・モータ・ギヤが回転する。

この時、インジェクション・ポンプのストップ・レバーを燃料開放位置まで連結されたロッドを介して移動させ、ストップ・モータ・ギヤ・ケース内のギヤが回転角端部まで逆回転し切替スイッチが働き、その電圧は遮断され(同電位になる)ストップ・モータは停止する。

キー・スイッチが入っている時は、ストップ・モータ・リレーのC-NC接点が開いているので、切替(3路)スイッチが切り替わってもストップ・モータが回る事はない。

この方式は、バッテリが完全放電状態(ブースタ・ケーブルなどを使って始動した場合など)では、キー・スイッチをOffにしても、ストップ・モータに十分な電気を流せずエンジンを停止出来ないため、手動のエンジン・ストップ・レバーを同時に設けていることが多い。



◎フューエル・カット・ソレノイド(ソレノイド・バルブ)

フューエル・カット・ソレノイドは、2つの励磁コイル(吸引用と保持用)とスプリングなどで押された弁(ストップ・バルブ)で構成されたもので、キー・スイッチのOn/Offで作動し、ストップ・バルブはピストン運動する。

フューエル・カット・ソレノイドは、主にインジェクション・ポンプ・ケースに直接取り付けられている。

主に、キー・スイッチを入れた時からエンジン始動(運転)で通電する「キーON時通電型」と、キー・スイッチを切った時のエンジン停止時で通電する「停止時通電型」がある。


…第30回:トラクターのエンジン停止装置について(停止時通電型)

作動例…常時通電型、ソレノイド(吸引用と保持用)、ソレノイド・リレー(1a接点)

エンジン停止時(キー・スイッチOFF時)
キー・スイッチを切ると、キー・ストップ・ソレノイド内の保持コイルに流れていた電気が遮断される。

そうなるとストップ・バルブを吸引保持する力が無くなり、ストップ・バルブはスプリングの力で押し出されるので、インジェクション・ポンプ内の燃料の通路を塞ぎエンジンが停止する。
エンジン始動時(キースイッチON時)
キー・スイッチをON位置(若しくは始動位置)に入れると、キー・ストップ・ソレノイド内部の保持コイルに通電し励磁される。

さらに、キー・スイッチを始動位置にするとキー・ストップ・ソレノイド・リレーが働きa接点(NO)が閉じ、キー・ストップ・ソレノイド内部の吸引コイルに通電し励磁される。

この時、キー・ストップ・ソレノイド内の吸引コイルが励磁されている(電磁石になっている)ので、ストップ・バルブはスプリングの力に押し勝ち吸引され、インジェクション・ポンプ内の燃料の通路を開ける。

エンジンが始動しキー・スイッチをON位置に戻すと、キー・ストップ・ソレノイド・リレーが切れ、それに伴い吸引コイルも働かなくなるが、保持コイルだけは励磁されたままなので、ストップ・バルブが吸引された状態を保持し、インジェクション・ポンプ内の燃料の通路は開いたままになる。

ストップ・バルブの作用が作動例とは逆のエンジン停止構造なら、キー・スイッチを切った時にソレノイドに通電させる停止時通電型としても利用出来る。

その場合は、より大きな電流が流れる吸引コイルの通電発熱を抑えるために、キー・スイッチを切った時に働くタイマ・リレーを使用して通電時間を抑えている。

作動としては同じように保持コイル、吸引コイルの順に励磁させて、ストップ・バルブを吸引したらすぐに吸引コイルの励磁が解かれ、保持コイルだけを数秒間だけ励磁させたままにする。

この数秒間でストップ・バルブの吸引を維持させ、確実にインジェクション・ポンプ内の燃料の通路を塞ぎエンジンが停止するようになっている。



作成日:2007/2