水冷式冷却装置

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水冷式冷却装置は、始動中の高温になったエンジン各部の温度を適正に保つ装置であり、一般に加圧式の強制循環式が使われている。
そして、サーモスタットの取り付け位置から出口制御式入口制御式に分かれるが、農業機械で使われるディーゼル・エンジンは出口制御式が多く用いられる。他、キャビン(室内)タイプの作業機械では、高温になった冷却水はエアコンとしても利用され、その冷却水熱を送風機で取り出し室内に送り、寒冷時などに個室を暖めることができる。


ラジエータ
冷却装置の構成:     
ラジエータウォータ・ポンプファンサーモスタットサブ・タンク、水量センサ、温度センサ、ファン・ベルト、冷却水など    



冷却水について

冷却水は、エンジンが高温になり過ぎないように、冷却経路を循環させてエンジン熱を奪う役割がある。
一般に冷却水は、冷却液(ロング・ライフ・クーラント)と水道水の混合水が使用される。
LLC(ロング・ライフ・クーラント)とは、エチレン・グリコールに特殊な防錆剤、防食剤、そして酸化抑制剤と凍結防止剤を添加したもので、冷却各部の金属腐食を長期間防止し、冬季の凍結、夏季のオーバヒートを防止する性能がある。
その効果は、一般的に2~3年なので定期的に交換する必要がある。

他、凍結防止のみを目的とした不凍液(アンチ・フリーズ)があるが、通常はLLC(ロング・ライフ・クーラント)を使用する。

冷却液(ロング・ライフ・クーラント)も不凍液(アンチ・フリーズ)も全水量の30%くらい混入すれば、大体だが凍結温度を-20℃くらいに下げる事ができる。混入率を増やせば、凍結温度もさらに下がる事になるが、60%以上にすると凍結温度が逆に高くなるので注意する。



  過去の記載→第14回:ラジエータ冷却水の交換について


出口制御式出口制御式

冷却水は、サーモスタットの開弁温度になるまでウォータ・ポンプの送水力で、ウォータ・ポンプとシリンダ・ジャケット間(エンジン内)を循環し続け、エンジンが暖まってくると、冷却水の温度は上昇する。
出口制御式とは、右図のようにウォータ・ポンプ・ケース(エンジン側)からラジエータに冷却水が送られる間にサーモスタットを取り付けたもので、冷却水は、サーモスタットの開弁温度に達するとラジエータを通り冷却され、エンジン側に流入してウォータ・ジャケット内を循環する。
出口制御式では、冷却水がシリンダ・ブロック及びシリンダ・ヘッドのウォータ・ジャケットを循環し、サーモスタットに到達した時点での冷却水温度をサーモスタットが検知して作動するため、流量調整後の応答遅れがあり水温変動を生じる。このため、入口制御式に比べ開弁温度が5~7℃くらい高めのサーモスタットを使ってる。


入口制御式

冷却水の温度が低い時は、出口制御式と同様にエンジン内を循環し続ける。
入口制御式とは、ラジエータからウォータ・ポンプ・ケース(エンジン側)に冷却水が送られる間にサーモスタットを取り付けたもので、冷却水は、サーモスタットの開弁温度に達するとラジエータを通り冷却され、エンジン側に流入してウォータ・ジャケット内を循環する。
入口制御式では、エンジンに流入する冷却水の温度をサーモスタットが検知して作動するため、応答遅れがなく水圧の影響も受けないので水温変動が小さい。
入口制御式のサーモスタットは76~82℃くらいのものが使われる。


コルゲート・フィン型ラジエータ

ラジエータは高温になった冷却水を冷やすためのもので、一般に右図のようなコルゲート・フィン型が多く用いられていて、各部は熱伝導性の高いアルミニウム合金、または薄い黄銅板で造られている。また、常に冷却水を満水にしておくためにサブ・タンクが取り付けられている。


ラジエータ・キャップ、サブ・タンク

ラジエータ・キャップは、プレッシャ・バルブとバキューム・バルブを備え、冷却系統に50~100kPaの圧力を加えるようにしたプレッシャ型ラジエータ・キャップが多く用いられている。これは、ラジエータ・キャップでラジエータを密封し、冷却水の熱膨張によって圧力を掛け、水温が100℃以上になっても沸騰しないようにして、気泡の発生を抑え冷却効果を高めている。
ラジエータ内が規定圧力範囲内のときは、プレッシャ・バルブとバキューム・バルブが閉じてラジエータ内の気密を保ち、冷却水の温度が上昇しラジエータ内が規定圧力以上になると、プレッシャ・バルブが開いてラジエータ内の圧力を調整する。冷却水が冷えてラジエータ内が負圧になると、バキューム・バルブが開いてサブ・タンクから冷却水を吸入し負圧をなくそうとする。農業機械では、ラジエータ・キャップは0.9kg/c㎡で作動するものが多く使われている。

サブ・タンクの冷却水とラジエータ・キャップ内のバルブ作動
  • ラジエータ内の冷却水の温度が規定内のときは、サブ・タンクの冷却水は変わらない。(プレッシャ・バルブ閉、バキューム・バルブ閉)
  • ラジエータ内の冷却水の温度が上昇して体積が膨張したときは、サブ・タンクの冷却水は増える。(プレッシャ・バルブ開、バキューム・バルブ閉)
  • ラジエータ内の冷却水の温度が低下したときはラジエータ内の負圧によって、サブ・タンクの冷却水は減る。(プレッシャ・バルブ閉、バキューム・バルブ開)

このようにラジエータ内は常に一定の冷却水量を保たれてる。また、サブ・タンクには規定範囲内の冷却水量を入れておく。


■ラジエータ・キャップの簡易点検
(正確な点検には、キャップ・テスタが必要になる。)

ラジエータ・キャップのパッキン不良や加圧弁、負圧弁不良では規定加圧力(0.9kg/c㎡)を保持できなくなるので沸点が下がる。
沸点が下がると冷却水は蒸発し易くなり、徐々に減り始めるので、オーバ・ヒートの原因になる。
初期症状として、エアの混入による冷却水の減少や、キャップ元から水が漏れるなどの症状が現れ、最終的にはエンジンから水蒸気が発生する所謂オーバ・ヒートの症状が出る。
プレッシャ・バルブ(加圧弁)を指で押す。
バネ圧を感じながら押し込むことができて、指を離すと弾力よく元に戻る。また、スプリングが見えるタイプのものは、錆付いていないか確認する。
バキューム・バルブ(負圧弁)を指で引く。
弱いバネ圧を感じながら引き出せて、指を離すとスムーズに密閉状態になる。ラジエータ・キャップの種類によって、スプリングの無いものもある。
プレッシャ・バルブ・パッキンの亀裂、硬化がないか確認する。
ラジエータ・キャップ・パッキンの亀裂、硬化がないか確認する。
バキューム・バルブ・パッキンの亀裂、硬化がないか確認する。
このパッキンは、あるものと無いものがある。無いものはプレッシャ・バルブ・パッキンと兼用。


サーモスタットサーモスタット

サーモスタットは、冷却水温が一定になると自動的に開閉する弁で冷却水の循環経路に設けられる。
エンジンが冷えているときは、ラジエータの水路を遮断して冷却水を早く適温にし、適温になった後はラジエータに流れる冷却水の流量を制御して水温を調整している。尚、弁は急に開閉するものではなく、冷却水が一定温度になると徐々に開いたり閉じたりする。
サーモスタットは、ワックス・ペレット型(右図)とベローズ型があり、ディーゼル・エンジンもガソリン・エンジンも一般にワックス・ペレット型が多く用いられている。
ワックス・ペレット型は、ワックスをペレットの中に密封したもので、熱によりワックスが膨張収縮する性質を利用し弁を開閉している。ベローズ型は、エーテルが熱により膨張収縮する性質を利用し弁を開閉するが、ワックス型に比べて水圧の影響を受けやすい。
出口制御式で82~88℃くらい、入口制御式で76~82℃くらいで作動するサーモスタットが使われる。









ウォータ・ポンプ、ファン

ウォータ・ポンプは冷却水を強制的に循環させるものである。
ウォータ・ポンプには渦巻ポンプが用いられ、インペラの回転によって冷却水を遠心力で外周に跳ね出してポンプ作用を行なっている。
ウォータ・ポンプのケース外インペラ軸先端にはファンが取り付けられ、ラジエータ側から冷却空気を吸い込み、ラジエータを流れる冷却水を冷やすと同時にエンジン本体も冷やしている。ファンの回転、つまりポンプの回転はクランクシャフト・プーリよりVベルト(ファン・ベルト)で伝えられ、クランクシャフトの1.2~1.6倍くらいの回転速度で常時回転している。また、故障などでポンプが回転しなくなっても、冷却水がインペラの羽の間を自由に通り抜け自然循環する構造になっていて、すぐにはオーバ・ヒートしないようになっている。
ファンの駆動には、上記のようなVベルト式とバッテリ電源によるモータ式があるが、農業機械に使われるエンジンにはVベルト式が多く用いられている。他、ファン・クラッチを取り付けたものがあるが、エンジンが適温になるまでの暖気時間の短縮と、ファン不要時のファン騒音の低減、またはファン駆動損失の低減を目的としている。ファン・クラッチにはオイルの粘性を利用する粘性式と、電気的にファンの回転制御を行なうマグネット・コイル式などがある。



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作成日:2007/6