トラクター 農業機械の簡単メンテナンスTOPへ戻る

トラクタはいわゆる牽引車で、一番よく使われる方法として、田圃や畑を耕す目的で後部にロータリ(作業機の一種)を取り付けたものである。
これはディーゼル・エンジンの回転力で回転するPTO軸の回転をロータリの耕運軸に伝達させて、耕運軸に取り付けられた爪が回転して床面を耕していくものである。
トラクタは農業機械では、ロータリの他、田圃専用として、代かきするためのドライブ・ハロー、畦を作るための畦塗り機、土を反転するためのパワー・ディスク、肥料を播くためのブロード・キャスタ、ライム・ソワーなどそれぞれ用途に合わせた作業機があり、これらはロータリと同じように、3点リンク・ヒッチを使いトラクタ後部に取り付けれるようになっている。ライム・ソワーに限ってはトラクタ前面に取り付けるものがある。他、草刈目的のモア、溝掘目的のトレンチャ、牽引目的のトレーラなどがある。


   トラクタの各名称、構造   操作レバー、ボタン等の意味と使い方   水冷式ディーゼル・エンジンの故障診断とその対処
   普通ロータリ   作業機の種類





トラクターの各名称、構造


トラクター



クラッチ(メイン・クラッチ)


エンジンからの動力は、クラッチを介してトランスミッションへ伝達される。

クラッチには、メイン・クラッチ、PTO軸クラッチなどがあり、構造上から摩擦クラッチ、油圧クラッチ、流体継手などが使われる。
トラクターでよく使われるのはディスク式の摩擦クラッチで、ディスクが1枚の単板式、2枚以上の多板式があり、ディスクが乾燥してる乾式とディスクが油に浸されている湿式がある。
メイン・クラッチは乾式単板クラッチがもっとも多く使われるが、湿式多板式などもある。また、乾式単板クラッチは動力伝達にコイル・スプリング式とダイヤフラム式がある。

クラッチ・ペダル

トラクタはダイヤフラム式の乾式単板クラッチが多く使われ、レリーズ荷重(ペダル踏力)が軽く、自動車のようにマスタ・シリンダやレリーズ(リリース)・シリンダが無く、右図のように、直接クラッチ・ペダルがクラッチ・ロッド、クラッチ・レバーを介して、ハウジング内のレリーズ・フォークに繋がっている。…レリーズ一式の写真
クラッチ・ペダルを踏み込むと、レリーズ・フォークはエンジン側に動いてレリーズ・ハブ、レリーズ・ベアリングがダイヤフラム・スプリングを押し込む。このとき、円でいうと、中心付近がダイヤフラム・スプリングで外周付近をプレッシャ・プレートだとすると、プレッシャ・プレートは逆にトランスミッション側に動く。そして、フライホイールクラッチ・ディスクプレッシャ・プレート間に隙間が生まれ、摩擦力が無くなり動力の伝達が無くなる。いわゆる、クラッチを切るという状態である。

レリーズ・フォークとハブの動き…クラッチ繋がるクラッチ切れる

■遊び量の調整

クラッチ・ディスクが磨耗すると、クラッチ・ペダルの遊びが少なくなる。したがって、右図でいうクラッチ・ペダル遊び量を20~30mmくらいにする。

クラッチ・ロッドの片方を外し(頭付ピンと割りピン、Rピン固定など)、調整部のナットを緩め調整する。
右図においてクラッチ・ロッドを短くすると、クラッチ・ペダルを踏んだときクラッチが浅い位置で切れ(早く切れる)、短くし過ぎるとすべり易くなる。逆にクラッチ・ロッドを長くすると、深い位置で切れるようになるが、長くし過ぎるとクラッチの切れが悪くなる。
したがって、使用過多になるとクラッチ・ディスクやプレッシャ・プレートなどが磨耗し、段々と浅い位置で切れるようになってくるので、クラッチ・ロッドを長くして調整する。


なるべく、各メーカーの指定基準値にし、クラッチ・ペダルを一杯踏み込んでクラッチが完全に切れている事を確認する。

簡易テスト方法:駐車ブレーキをかけ、エンジンをアイドリング回転でギヤを高速にして、クラッチをゆっくりつないで、エンストすればクラッチはOK。

長期保管について:トラクタを長期保管する場合は、クラッチ・ディスクが錆ついてプレッシャ・プレートに膠着する可能性があるので、クラッチ・ペダルを一杯踏み込んでロックしておく。
クラッチ・ペダル



ブレーキ


トラクタのブレーキは、作業上旋回半径を小さくするため、左右の後輪に別々に制動装置を設けている。したがって、ブレーキ・ペダルは左右2つ並んでいて、それぞれ旋回方向のペダルを踏み込み旋回するようになっている。
しかし、現在ではAD倍速装置(クボタ呼称)など、ステアリングをきるだけでブレーキを踏まずして、圃場を荒らさない旋回ができるものが主流で、使用者の任意で前者と後者の好きなほうで使うことが出来る。
また、道路走行では左右のブレーキ・ペダルを連結して一つのペダルとして使うが、AD倍速装置を使えば田圃内でもペダルを連結したままで良い。
道路走行するときは不意な急旋回を防ぐため、AD倍速装置を切って走行する。

トラクタに使われるブレーキは、後輪のみで右図のような乾式ドラム式(内部拡張式)と、湿式ディスク式があり、共にデフ・ギヤ軸部に設けている。
現在のトラクタは、主に機械式の湿式ディスク・ブレーキが使われている。
これは、常に油に浸されているため熱の放散が良く、ディスクの磨耗が少なく耐久性があり、安定した制動力があるためである。
コンバインなどは、油圧の湿式ブレーキが使われたりする。

湿式ディスクは800時間くらいでかなり磨耗していると個人的に思う。

ブレーキ・ペダル

右図は、内部拡張式のブレーキで現在殆ど使われないがブレーキ装置の基本的な形である。
これは、自動車とは違いマスタ・シリンダを設けてなく、左右それぞれのブレーキ・ペダルからそれぞれのブレーキ・ロッドを介して、それぞれのブレーキ・レバーまで油圧を使わず踏力でブレーキを作動させている。ブレーキ・ペダルを踏み込むとブレーキ・カムの角度が変わり、それに押されてブレーキ・ライニングが開き、デフ・ギヤ軸部に連結されて回転するドラムの内側に、ブレーキ・ライニングを摩擦させて制動する仕組みになっている。
湿式ディスク・ブレーキも同様に、ブレーキ・ペダルからブレーキ・ロッドを介してブレーキ・レバーへと繋がっている。

※田植え機も同様の仕組みになっているが、田植え機は現在ワン・ペダルのものが主流になっている。


■遊び量の調整

右図のような内部拡張式は、使用時間過多などでブレーキ・ライニングは磨耗してブレーキ・ペダルの遊び量は変化する。
現在主流の湿式ディスク・ブレーキも同様に、使用時間過多などでブレーキ・ディスクが磨耗してブレーキ・ペダルの遊び量は変化する。
したがって、ブレーキ・ペダルの遊び量は、クラッチ・ペダル同様に20~30mm程度に調整する。また、左右のペダルの遊び量の差を出来るだけなくすようにする(5mm以内)。
調整部は通常ブレーキ・ロッドに設けてあり、固定ナットと調整ナットで構成され、ブレーキ・ロッドの片方を外さなければ調整ナットを回すことが出来ないものと、そのまま調整ナットを回すことが出来るものがある。また、ブレーキ・ロッドが左右、縦横2本ずつあるものがある。ブレーキ・ロッドの両端は一般に、頭付ピンと割りピン、Rピンなどでそれぞれ固定されている。

なるべく、各メーカーの指定基準値にする。
乾式ブレーキ



ディファレンシャル・ギヤ(デフ・ギヤ)


トラクタの駆動力は、トランスミッションから差動装置(ディファレンシャル・ギヤ)、デフ・ロック、ファイナル・ギヤ、後輪軸へと伝達される。

ディファレンシャル・ギヤは、旋回時に外側の駆動車輪は内側の駆動車輪より多く回転する必要があるので、左右の車輪に回転差を与えて旋回し易くしている。トラクタで使われるディファレンシャル・ギヤは、主にベベル・ギヤ式で2ピニオン式(右図)と4ピニオン式が使われている。

ディファレンシャル・ギヤは、ディファレンシャル・ピニオンとサイド・ギヤのベベル・ギヤ同士で構成されている。
ディファレンシャル・ピニオンはピニオン・シャフトによりディファレンシャル・ケースに取り付けられ、ここにサイド・ギヤが噛み合っている。サイド・ギヤは、スプラインによりアクスル・シャフトと結合される。

直進時は左右の車輪にかかる抵抗が等しいので、ディファレンシャル・ギヤは回転せず、リング・ギヤとサイド・ギヤは一体なり同方向に回転する。また、旋回時は左右の車輪ににかかる抵抗に差が生まれるため、ディファレンシャル・ピニオンは公転しながらサイド・ギヤの回転差を補正するように自転する。この作用で左右のサイド・ギヤに回転差が与えられ円滑に旋回できる。

ファイナル・ギヤは、アクスル・シャフト(ディファレンシャル・ギヤ・シャフト)の回転を減速させトルクを増大させる減速装置で、主に左右の後輪軸に取り付いている。。最終的な減速をすることから終減速装置と言われる。


デフ・ロック

畦越えなどの段差や条件の悪い圃場などの泥濘で、タイヤが片側だけ空転してトラクタが動かなくなるときがあり、ディファレンシャル・ギヤを機械的にロックさせ、強制的に同時に両輪を回転させるものである。
デフ・ロックはドグ・クラッチやピンを使い、デフ・ロック・ペダルで操作するものが主流である。他、4駆走行時など左右の車輪のスリップ差が大きくなると自動的に差動装置をロックするものや、直進時は常時デフ・ロックがかかり旋回時に解除するなどの自動差動制限装置を設けたものがある。

※デフ・ロック・ペダルは踏み込んだままだと旋回不能になるので、直進のみに使用する。

デフ



トランスミッション


トラクタの変速装置(トランスミッション)は、大きさと歯数の違うギヤをいくつか組み合わせ、エンジンからの動力を進行速度や作業に適したトルクと回転速度に変える装置で、後進するときはギヤの回転方向を変えて行っている。
トラクタのトランスミッションは、主変速(例、1~4速)、副変速(例、1~4速)、超低速(クリープ)、前後進変速、PTO変速(例1~3速、逆転)などから構成されるが、機械によっては前後進レバーがなく、主変速レバーに後進位置を設けているものなど様々である。
従って、これらの組み合わせによって数十段に変速できることになる。

走行用の変速装置は、選択摺動式(選択噛み合い式)、常時噛み合い式、同期噛み合い式などのギヤ式と、無段変速ができるHST(静油圧駆動式)などの油圧式がある。



選択摺動式(スライディング・メッシュ)

選択摺動式は右上図のようにメイン・シャフト上のスライディング・ギヤをスライドさせ、カウンタ・シャフト上の駆動ギヤと選択的に噛み合わせ変速する構造である。
ギヤ歯先が磨耗し易く、ギヤ鳴りを起こし易いが簡単な構造なので、主に副変速や4駆変速に用いられる。スライディング・ギヤがカウンタ・シャフト上の駆動ギヤに噛み合っていない状態が中立(ニュートラル)である。

スライディング・メッシュ
常時噛み合い式(コンスタント・メッシュ)

常時噛み合い式は、右図のようにカウンタ・シャフトに固定された駆動ギヤと、メイン・シャフト上で自由に回転できるように取り付けられたギヤとが、常時噛み合っている。エンジンからの動力は選択摺動式と同様にドライブ・ギヤからカウンタ・シャフトに伝えられ、所望の空転ギヤをドグ・クラッチなどの噛み合いクラッチでメイン・シャフトに結合して変速する構造である。
ギヤの磨耗や欠損は比較的少ないので、主変速などに使われたりする。


同期噛み合い式(シンクロ・メッシュ)

同期噛み合い式は、右下図のように噛み合わせるギヤの周速度をシンクロナイザ・リングの摩擦力によって同期させてから、ギヤを噛み合わせるもので、走行中でも円滑に変速することができ、現在、主変速で一番多く使われている。シンクロナイザは、主にイナーシャ・ロック型でキー式(右下図)とピン式がある。

※主変速操作で、使用時間過多などでシンクロナイザ・リングの歯先が痛んでくるとギヤの入りが悪くなることがある。「ガッ」という異音が度々出るようならダブル・クラッチ操作などでギヤを入れるようにする。


コンスタント・メッシュ
これらの変速装置は、変速レバー、シフタ・アームなどを使いテコの原理で機械的に変速操作をしているが、現在もっとも主流なのが油圧クラッチを使ってノークラッチ変速ができるパワー・シフト式である。これは同期噛み合い式の変速を油圧ピストンなどで変速している。




旋回時前輪倍速装置

倍速装置とは、4輪駆動走行で旋回時に外側の前輪を約2倍に回転させて、より旋回し易くする装置である。これは、前輪による土寄せ現象を減らす役割があり、前輪の切れ角が、約40°になると作動するようになっているものが多い。
倍速装置は、カム、ワイヤ、スプリングなどを使い倍速クラッチを入り切りする機械式と、前輪の切れ角をセンサを取り付け検出し、電磁弁で油圧を働かせて油圧クラッチを入り切りする油圧式がある。

ステアリングをある程度回すと、倍速クラッチが繋がり、倍速ギヤから推進軸(プロペラ・シャフト)を介して、前輪ディファレンシャル・ギヤに通常の約2倍の回転で動力が伝わるようになる。前輪ディファレンシャル・ギヤも、上記の後輪ディファレンシャル・ギヤと同じように外側の車輪が内側の車輪より多く回転する構造なので倍速旋回が可能になる。

この装置に自動制動装置を取り付けたものがAD倍速装置である。






シンクロ・メッシュ

PTO(パワー・テイク・オフ)軸


PTO軸は、トラクタの後部ほぼ真ん中に位置し、ロータリなどの作業機の回転動力を供給するためのものである。エンジン動力の伝達は、シングル・クラッチの普通型、デュアル・クラッチの2段踏み込み型、PTOクラッチ独立の独立型などがあるが、普通型が主流である。
普通型とは、主クラッチ・ディスクが一枚で走行とPTOの両方を入り切りできるもので、2段踏み込み式とは主クラッチ・ディスクが2枚あり、クラッチ・ペダルを少し踏むと走行が切れ、更に踏み込むとPTOが切れるものである。
独立型は、クラッチ・ペダルで走行を、レバーやスイッチでPTOを入り切りし、それぞれ独立して操作できる。つまり走行中でも停止中でもPTOを断続することができる。

PTO軸はどのメーカーも同じで、一般に6溝スプラインで呼び径35mmのものが使われ、トラクタ後方から見て右回りに回転し、PTO軸の回転速度は走行速度とは関係なく、エンジン定格回転数(約2500rpm)のとき、PTO1速の回転数は約540rpmになる。

一部の大型トラクタでは、走行変速からPTO動力を得ていて、PTO軸が走行速度に比例して回転するものがある。
PTO軸



ステアリング


ステアリングは、トラクタの進行方向を任意に変えるためのものだが、現在パワー・ステアリングが主流になっている。これは、エンジンで油圧ポンプを作動させ、その油圧の力を利用し、かじ取り装置の途中に設けた倍力装置を作動させて、ステアリングの操作力を軽減している。

パワー・ステアリングの種類は大きく以下の2つに分かれる。

◎リンケージ型…パワー・シリンダをステアリング・リンケージの途中に設けてある。
リンケージ・コンバインド・タイプ
パワー・シリンダとコントロール・バルブが一体になっている。
リンケージ・セパレート・タイプ
パワー・シリンダとコントロール・バルブが別々の設けてある。
◎インテグラル型…パワー・シリンダとコントロール・バルブをステアリング・ギヤ・ボックス内部に設けてある。


インテグラル型はコンパクトにでき、取付や油圧配管が単純化できる利点があるため最近ではよく使われている。右図のインテグラル型は、オイル・リザーバやパワー・ステアリング専用のオイル・ポンプがあるが、他、専用のオイル・ポンプやオイル・リザーバを設けず、作業機昇降装置のオイル・ポンプやオイルを利用して、パワー・ステアリングの油圧制御にレギュレータ・バルブを設けているものなどがある。


■インテグラル型パワー・ステアリングの遊び量の調整

ステアリングの遊び量が大きいと、ステアリングが振れる、切れが悪くなる、路面の衝撃が跳ね返るなどの現象がでるので、一般に遊び量は20~50mm程度になるように調整する。

前輪を直進状態にして、ステアリングを手で軽く回し、ステアリング外周の遊び量を測定する。
基準値外の場合は、ステアリング・ギヤ・ボックスのロック・ナットを緩め、ドライバーでアジャスト・スクリュを回して調整する。締め込むと遊び量が少なくなり、緩めると遊び量が大きくなるなど。調整後はロック・ナットを確実に締め込む。


■パワー・ステアリングのエア抜きの仕方

オイル交換した後や補充した後には、十分オイルを循環させるためエア抜きが必要にになる。

エンジンをアイドリング状態にして、オイル・リザーバにパワー・ステアリング専用オイルを切らさないように適量入れながら、リリーフ音が聞こえるまでステアリングを数回右と左に一杯回し続ける。オイル量はオイル・リザーバ上限位置までとする。


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インテグラル・タイプ



前輪、前車軸


前輪は、ステアリング操作の確実性、復元性、安定性を保つため一定の角度(トーイン、キャンバ角、キングピン角、キャスタ角)を持たせフロント・ホイール・アライメントをとっている。
トラクタではキャンバ角、キングピン角、キャスタ角は設計段階で決められて出荷されるので調整できない。
調整できるのはトーインのみで、タイロッドの長さを変えて調整する。
一般にトーイン基準値は2~8mmである。



トラクタは、現在2駆4駆切替できるタイプが主流になっている。
4駆に入れると、プロペラ・シャフトから前輪ディファレンシャル・ギヤを経て、左右それぞれの前輪ベベル・ギヤ・ケース内のベベル・ギヤへ、アクスル・シャフトを介して動力が伝わる。そして、その動力はピニオン・シャフト、ピニオン・ギヤから前輪ギヤ・ケース内ベベル・ギヤへ伝達され前輪が回転する構造になっている。




前輪ギヤ・ケース分解図の例(下図)

フロント・ホイール・アライメント
前輪ギヤ・ケース オイル漏れについて

トランスミッションや前車軸などオイルが循環するところは、外部からの泥や水などの混入を防ぐのと、オイルが外へ漏れるのを防ぐために運動部、運動面には、オイル・シールやOリングを設けている。
運転中は各オイル・シールのリップ部(摺動部)と軸(運動面)は常に摩擦を受け合っているので、少しずつ消耗し続けることになる。
トラクタは水田などに入るため、運転中は常時泥や水に浸かるので使用時間が増えれば増えるほど、どうしてもオイル・シールが磨耗、損傷しオイル漏れが起こり易くなる。

特に、荷重がかかり運動の多い部分はオイル漏れが起こり易い。



オイル漏れし易い箇所

前車軸の前輪ギヤ・ケース回り、PTO軸ベアリング・ケース、後輪車軸、パワー・ステアリング・シリンダなど。



作業機装着装置


作業機装着装置は、一般に作業機を3点で支持して上げ下げするようになっている。左右一本ずつのリフト・アーム、リフト・ロッドで吊られるロワ・リンクと、真ん中上部に位置する1本のトップ・リンクの合計3本のリンクで支持することから3点リンクと呼ぶ。トラクタは基本的に、この3点に直接もしくはヒッチ(カプラ)を介して作業機を取り付けて、油圧装置を使い昇降させることができる。

3点リンクの寸法は日本工業規格(JIS)で定められている。

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チェック・チェーン

作業機が左右になるべく揺れないないようにと、作業機を真っ直ぐ正面に向かせるために、左右に引っ張り合って取り付けられている。作業機が上がった状態のほうが、下がった状態より左右の遊びは少なくなり張るので、地面から少し上げた状態で左右の遊びを少なく、トラクタに対して真っ直ぐ正面を向くように調整する。
通常、泥や錆で膠着して調整部が回転しなくなるので、なるべく水で泥を落として、随時注油をしておくとよい。

リフト・シリンダ

リフト・シリンダはリフト・アームとロワ・リンクの間に取り付けられていて、通常左右どちらかがリフト・シリンダで、もう一つはリフト・ロッドになっている。作業機を上げ下げするための中継と作業機の水平を保つ役目があり、リフト・シリンダはシリンダ伸縮位置を検出するストローク・センサが取り付けてある。

このリフト・シリンダ(リフト・ロッド)とロワ・リンクを固定するピンの位置は、作業機によって穴位置を変える必要がある。これは、使用目的、使用作業機によって、よりを下げる必要があるからである。
通常ロータリではロワ・リンク前穴、リフト・ロッド上穴の組み合わせが多い。

※穴位置を変える場合は、ユニバーサル・ジョイントの異音有無と作業機の最大上げ位置を必ず確認する。
特殊3P-B型オート・ヒッチ



作業機昇降装置(油圧装置)


作業機昇降装置は、エンジンの動力で油圧ポンプを回転させて、コントロール・バルブに送られたオイルの流れを意図的に変えて油圧シリンダに送ることによって、リフト・アームを上げ下げさせることができる。

油圧シリンダ

トラクタは、作業機を上げるリフト・アームのリフト・シリンダは主に単動式のものが使われる。上げるときだけ油圧シリンダにオイルを送り、下げるときはコントロール・バルブ内でオイルを抜き作業機の自重で下降する仕組みになっている。
また水平を保つためのリフト・シリンダなどは、上げ下げとも油圧で作動する複動式が使われたりする。

コントロール・バルブ

コントロール・バルブでは、ポジション・レバーを操作することによりリンク機構を介してスプールが動くのでオイルの流れが変わる。
ポジション・レバーを操作しないときは、油圧ポンプから送られてきたオイルはアンロード・バルブを押し開きオイル・タンク(トランスミッション)に戻る。油圧シリンダ内のオイルは、チェック・バルブとポペットが閉じていて流れないため、作業機は一定の高さを保持している。

リリーフバルブ

リリーフ・バルブは、油圧回路の最高圧力を規制するために設けてる。リリーフ・バルブの設定圧力は160~180kg/c㎡くらいで、リリーフ・バルブが開くときの圧力がその機械の最高圧力になる。
油圧の流れ


→油圧回路のお勧めサイト:動く油圧空気圧講座
オイル・ポンプ
油圧ポンプ(オイル・ポンプ)

油圧ポンプは、エンジンにより直接Vベルトなどで駆動されるものと、エンジンに隣接して取り付けポンプ駆動ギヤを設けて駆動されるものなどがあり、回転式ポンプでスリッパ型、ベーン型、トロコイド型、ギヤ型などがある。
ギヤ型は、右図のような外歯歯車が2つ並んでする回転するものと、外歯歯車が内歯歯車の中を回転するものがあり、トラクタの作業機昇降装置に使われる油圧ポンプは、外歯歯車が2つ並んで回転するギヤ型を、クランク・シャフトなどからポンプ駆動ギヤを介して駆動させるものが多く使われる。
ギヤ・ポンプは容量が決まっており、一定量のオイルを送ることができて、一般に回転数は1000rpm以内で使われる。

油圧ポンプと言えど消耗品なので、使用時間過多になってくるとケーシング内面や、ギヤの当り面が磨耗し能力が若干低下する。通常、使用時間が1200時間を越え、オイル・フィルタとオイルが新しいのに作業機の上がりが遅くなったなどの場合は油圧ポンプの消耗の可能性があると考える。
オイル・シールの交換くらいなら良いが、分解が必要な場合は部品を変えるより、なるべくポンプ・アッシで交換したほうが良い。


チェック・バルブ

チェック・バルブは、昇降時の油圧シリンダの油圧を保持するためのもので、油圧シリンダにオイルを送るときに開いて、送らないとスプリングの圧力で閉じるようになっている。
油圧バルブ

落下速度調整弁(油圧バルブ)

落下速度調整弁は作業機の下降速度を調整する弁で、閉めれば閉める程下降速度は遅くなり、閉め切ると作業機は下降しなくなると同時に3点リンクの停止機能も兼ねている。また、開ければ開ける程落下速度は速くなり、開き切ると自重のまま落下するのでとても危険である。程良い落下速度になるように調整する。
落下速度調整弁は右図のような回転式や、他レバー式などがある。

油圧オイル

トラクタに使われる油圧オイルは、トランスミッションをタンクとしてミッション・オイルと兼用で使用するものが主流である。
コンバインなどは、中型以上になると作動油専用タンクを別に設けてるものもある。
トラクタもコンバインも一般に#80~90のギヤ・オイルを使用する。

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作業機昇降装置に使われる自動制御装置の種類


自動制御装置は例をあげると、コンピュータからセンサ電源として一般にDC5Vを出力させ、多くが可変抵抗器(~数KΩ程)などの各センサを通し、それぞれ変化するアナログ電圧をA/Dコンバータでデジタル信号に変換しマイコンで演算処理される。
また、D/Aコンバータからの出力電圧を基準として比較される。

その処理結果をもとに油圧を管理するソレノイド・バルブを作動させて一定制御させる仕組みである。
尚、ソレノイド・バルブやモータなどのアクチェータは、必ずリレーを介して作動させる仕組みになっている。

同様に運転者が操作指示できる操作ユニットも同じ回路で、A/Dコンバータ、マイコンと通信線で繋がっている。
操作ユニットは、マイコンの予めプログラムされたいくつかの処理パターンを決める役割を持ち、マイコンはその設定された処理パターンに基づいてセンサから入力される信号を比較処理し、その処理結果に応じてアクチュータなどの作動に必要な電気を供給させる。

現在トラクタには、主に下記の自動制御装置などが装備されている。
   
自動制御装置名 役目、内容 関係するセンサ、ワイヤ
ポジション・コントロール ポジション・レバー(油圧レバー)の設定位置に応じて、ロワ・リンクの高さが決まるもの。 ポジション・センサ、リフト・アーム・センサなど
自動耕深制御装置(デプス) ロータリの均平板が土圧により上下するのを、均平板に取り付けられたセンサまたはワイヤにより感知し耕深位置を一定に保つもの。尾輪を使って深さを調整していたのを、コンピュータや油圧装置を使って制御する仕組み。 カバー・センサ、リフト・アーム・センサ、エンジン回転センサ、車速センサなど
ドラフト・コントロール(Eオートなど) 自動耕深調節(デプス)ダイヤルで設定した耕深位置に対して、土圧の変化やタイヤの沈下などによる耕深位置の変化、またエンジンの負荷変動などを検出して一定にするもの。 リフト・アーム・センサ、エンジン回転センサ、アクセル・センサなど
自動水平制御装置(モンロー) トラクタが傾いてるときでも作業機は常に圃面に対して、リフト・シリンダを伸縮させ水平を維持しようとするもので、基本水平位置は任意に変えることができる。傾きを感知するローリング・センサは、傾斜角度で容量が変化するコンデンサが多く使われる。 ストローク・センサ、ローリングセンサ、リフト・アーム・センサなど
※クボタ呼称で記載




ユニバーサル・ジョイント


ユニバーサル・ジョイントは、トラクタからの動力を作業機に伝達させるもので、右図のような普通形ジョイントと、普通型よりユニバーサルの有効角度の多い広角ジョイントなどがある。ともに2つのシャフト(ジョイント)をオスメスに分かれ伸縮するようになっている。

シャフト部は一般に細かいスプラインになっていて、決まった位置でしか入らないようになっている。他、広角ジョイントなど角パイプ状のものなどがある。
位置が分からないものは、右図のようにオスメス両方のジョイントを同じ向きにする。
そして、シャフト内に泥が混入しないように黄色い保護カプラで保護されている。
ユニバーサル部は十字に動く特殊ベアリングになっていて、グリスによって保護されている。広角ジョイントはPTO軸側シャフトに十字ベアリングを2つ取り付け、その名の通り広角に対応できるようになっている。

ユニバーサル・ジョイントは取り付けた状態で脱落や破損を防ぐため、一般に中央のオスメス重なり寸法は1番伸びた状態で約100~150mm以上、一番縮んだ状態で両先端部の隙間寸法が20~30mm以上あるのが理想である。
そして、作業機によっては上げたときにユニバーサル部が無理をして破損に繋がる恐れがあるので、ユニバーサル部が約30°以上にならないように上げ高さ規制をかける。つまり、ポジション・レバーを最上位にして音がうるさい場合は、機械的に無理をしているということなので、異常な音がでる高さまで作業機を上げないことである。


■脱着の仕方

ユニバーサル・ジョイントの脱着は必ず、水平な場所で作業機を地面に降ろした状態で行う。PTO軸側、PIC側どちらでも良いが、まず片方をロック・ピンを押しながら奥へ入れ、反対側をロック・ピンを押しながら引き抜く。そして、同様にもう片方を引き抜く。
十分に油を両軸、シャフト部回りに注してから行うと比較的に外し易いが、普段ロータリしか使わない人は余程外すことがないので、そのため膠着して手で外せないことが多い。その場合は叩き難いが、ハンマなどで叩きながら外す他ない。
また、どうしても外れない場合はロータリをユニバーサル・ジョイントが付いたまま外すと、オスとメスに分かれて抜けるのでロータリを外す

その後、オスとメスのスプラインを入れるには右図のように、スプラインの一箇所が繋がっている箇所どうしを合せて入れる。

取り付けるときも同様に、どちらか片方からロック・ピンを押しながらロック位置よりさらに奥へ入れ、反対側をロック・ピンを押しながら入れてロック・ピンがロックするところを確認する。そして、もう片方をロックする位置まで下げる。
脱着は寸法に余裕があるものは、当然ながら初めにロック位置より奥まで入れる必要はない。

取り付け側の指定は、普通ジョイントはどちらに入れてもさほど問題はないが、広角ジョイントはPTO軸側に広角側を取り付ける。
原則、保護カプラに取付側の指定シールが示されているのでその通りにする。

ユニバーサル部(十字ベアリングのグリス・ニップル)には十分にグリスを注入し、シャフト部はメス側の穴を特に灯油などできれいに掃除し同様にグリスを塗布して組み込む。
保護カプラは、回転部の玉が無くなりあまり役目を果たさなくなることが多いので、その分定期的にユニバーサル・ジョイントを外し、掃除とグリス注入をするようにする。尚、右図は保護カプラが付いていない状態である。
ユニバーサル・ジョイントは新品で購入すると結構高価なものなので、グリス・アップすることは磨耗、破損を防げる意味でとても大事である。
USJ





ユニバーサルジョイント





ユニバーサルジョイント

グリス切れによる十字ベアリング
が壊れたユニバーサル・ジョイント



タイヤ


タイヤは、レーヨンやナイロンなどの繊維をすだれ状にしたものをを良質のゴムで布状とし、これを重ね合わせたものを加硫成型して製造される。
タイヤはタイヤとホイール間に空気を圧入して使用するが、タイヤの中にチューブを入れ、それに空気を圧入して使用するものと、チューブを必要とせず直接空気を圧入して使用できるチューブレスがある。
タイヤには、空気圧を保持するためにカーカス(強度部材)が設けられ、繊維コードが数層重ねられている。繊維コードを斜めに重ねてあるものがバイアス・タイヤ、放射状で周方向に直角に入っているがラジアル・タイヤである。またこの数(強度)をプライ数(PR)という。
トラクタはバイアス・タイヤが多く使われ、水田用としてラグを高くしたハイ・ラグ・タイヤがある。

タイヤの呼び方は次の3つの型式が使われる。
  1. タイヤの幅の呼び-リム径の呼び-プライ・レーティング(PR)
  2. タイヤの幅の呼び/扁平比の呼び-リム径の呼び-プライ・レーティング(PR)
  3. タイヤの負荷能力を示す記号、扁平比の呼び-リム径の呼び-プライ・レーティング(PR)
タイヤ

トラクタで主に使われるのはバイアス・タイヤで、「a」の型式が使われ、「13.6-26 4PR(AG)」では、タイヤの幅(トレッド幅)、リムの径、強度のプライ数(PR)、農業用(AG)と示され、タイヤの幅とリムの径は共にインチで表示される。他、乗用車用では、速度区分に応じて、一般(-)、S、H、Vの4区分がありサイズ表示の最後に記入される。

他、ラジアル・タイヤでは「13.6R26 121 A8」と表示され「b」の型式が使われる。タイヤの幅、Rはラジアル、リムの径、121は荷重指数、A8は速度記号であり扁平比の表示はない。タイヤの幅とリムの径は共にインチで表示される。
また乗用車のラジアル・タイヤも「b」の型式が使われ、表示はトラクタに使われるラジアル・タイヤとは少し違い「195/60R14 85H」などと表示される。タイヤの幅だけがインチではなくmmで表示され、次に扁平比(タイヤの高さ÷タイヤの幅)、ラジアル構造記号、リムの径、荷重指数(最大515㎏)、速度記号(最高速度210㎞/h)の順に表示される。


■空気圧について

タイヤは、安全性および走行性能を十分発揮させるために、前後左右ともに適切な空気圧に保持することが大切である。

使用時の空気圧はタイヤのサイズによって違うが、前輪が2駆で1.2~1.4㎏f/㎝2、4駆で1.2~2.0㎏f/㎝2程であり、後輪は0.8~1.3㎏f/㎝2程であるが、原則タイヤ側面に記載されている空気圧に調整しておく。
また、フロント・ローダなどを使う場合は、前輪の空気圧を2.0~2.4㎏f/㎝2程にする。

タイヤ表示



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